今日は躑躅森エリコの記念するべき日であった。
ついに、2年間の訓練を経て、日本の平和機関JPSS(ジャパン・プロテクション・サムライ・スクワッド)のエージェントになる。エリコの興奮の様子は、昨晩なかなか眠りに着くことができなかったほどであった。
「しまった!」
そのせいか、目が覚めた時には遅刻寸前であった。エリコはベッドから飛び起きると、急いで短い髪を整えながらスーツを着た。スーツは藍色で下は長ズボン。柔軟性が高く、格闘戦もしやすい。もちろん組織の一員として、エリコは戦闘訓練をしっかり受けている。
小型拳銃を携え、荷物をリュックバッグにまとめると、JPSS特製のゼリーを飲みながら家を飛び出した。
「任官式に遅刻とか、シャレにならないって!」
エリコは叫びながら、東京の街中を全力疾走していた。
任官式は人生の転換点。しかしエリコほどこの日を境に人生が変わった者はいないだろう。
エリコは今日が全ての始まりであることを、知る由もなかった。
[[次へ->2]]
† Column †
JPSS
日本の平和機関(Japan Protection bureau Samurai Sqard)。日本の敗戦後における武装放棄の原則に基づいて、新しい日本国防の手段として、秘密裏に創設された。
主人公の躑躅森エリコは、ここの新入エージェント。
それはエリコが、東京霞ヶ浦にあるJPSS本部まで15分のところまで来た時だった。
ドカン!
「何!?」
突然の爆発音に、エリコは足を止める。その音は、本部のある方角から聞こえてきたように思えた。
「まさか……ね」
一抹の不安を抱きながら、エリコは再び走り出した。
その一抹の不安は本部に近くたびに大きくなり、ついには確証に変わった。
息を切らすエリコの目の前に、火災の煙に包まれるJPSS本部のビルが映っていた。
「そんな……」
施設の入り口から、多くの機関員が飛び出してくる。彼らはススまみれで、全員何かしら怪我をしているようだった。
友人である女エージェントを発見した。エリコは足を引きずっている彼女に駆け寄る。
「何があったの!?」
「……敵の襲撃よ……」
友人は掠れた声でいうと、エリコの肩にドッともたれかかった。
「局長がまだ中に……、エリコお願い……私のことはいいから……」
局長・倭(やまと)がまだ中に、それは一大事だ。
しかし倭を探すために、目の前の友人を捨て置いて大丈夫なのだろうか?
エリコは決断を迫られた
[[だめ、あなたを放っておけない!->39]]
[[わかった。局長を探してくる->34]]「わかった、ごめん!」
エリコはそう言うと、友人を他の避難者に託して崩れかけのビル内に入っていく。
ビル内は煙ですでに充満していた。
エリコはまず、倭が一番居そうな、最上階の局長室に向かうことにした。
……階段をひたすら登り、ビルの中腹にまで差し掛かった頃だろうか?
ふと横を見てみると、「緊急時以外、入るべからず」と呼ばれた厳重な扉が、固くしまっていた。
「今はその緊急事態。でも局長を探さないと」
エリコは決断を迫られる。
[[入ってみよう。そこに局長がいるかもしれない->23]]
[[局長室に行ってからでも遅くない……はず->5]]「いいから、局長を……」
「だめ!」
エリコは友人を、担いで、できるだけビルから遠ざけようとした。
やがて救急車が到着し、エリコは安堵を覚えて友人を救急退院に手渡した。
その時だった。ドドーォ、という音を立てて、ビルのコンクリートが崩れ落ちた。たちまちビルの下は瓦礫の山になり、ビルは骨組みだけが残った。
結局その後の救助活動でも、倭の姿は見られなかった。
この事件は、日本の七不思議の一つとして数えられることになる。
と、いっても、あと半月後には人類は滅亡している訳であるが。
『END 人類最後の怪事件』
[[最初へ->1]]「早速、向かわなくちゃ」
エリコは無事だった本部ビルから出て、友人の無事を確認するとすぐに目的の場所に向かった。
局長を助ける鍵がそこにある。エリコはその言葉を信じて、突き進んでいった。
孫悟空。「西遊記」を最後まで読んだことのあるエリコではあったが、まさか本当に実在するとは思ってもいなかった。
東京の一角にある神社。そこが今回の目的地だった。あたりはすでに夜で、人気がない。
「こんなところに一体何が?」
例の紙切れを読んでみる。一番最後には「力石」とだけ書かれていた。
重くなったり軽くなったりすると評判の「力石」は、神社本殿のすぐ傍にあった。形はいびつな球形。それ以外には何の変哲もなかった。
「これが何だってのよ……」
と、エリコはここで、紙切れの裏側に何かが貼り付けてあるのを見つけた。それは、お札だった。昔の文字で読めなかったが、裏には糊がついている。
「まさか、これで封印解除。なんておかしな話あるわけないよね。確かに孫悟空は石でできているってのは知っていたけど」
お札を紙切れから剥がし、それをそのまま半信半疑で「力石」に貼り付ける。
「力石」が……光った!
「!?」
みるみるそれは猿の形になっていき、やがてそれは、猿になった。
「キッキー!」
猿は途端に猿らしく、エリコの周囲を走り始めた。
唖然となっていたエリコはやがて正気を取り戻し、猿に話しかけることにした。
[[孫悟空さんよね? 助けて!->91]]
[[局長が大変なの!->72]]
[[落ち着かないと、撃つわよ、銃で!->13]]
[[(黙って捕まえようとする)->50]]部屋の中は何もなかった。ただ一つの「危険」と書かれた赤いボタンを除いては。
エリコは一瞬ためらったが、そのボタンを押してみることにした。今は緊急事態なんだし。
人差し指で軽くボタンを押す。
それ以降の記憶はない。
だって、その直後に、地球が大爆発を起こしたのだから。
エリコは自分が「地球破壊爆弾」のスイッチを押してしまった後悔をする暇もなく、消滅した。
『END 地球爆発』
[[最初へ->1]]エリコは最上階の局長室にたどり着く。
よかった! 局長が見えた!
と思うのもつかの間、倭はどうやら誰かに引きずられているみたいだった。
「何者だ?」
倭を左手で引きずっている相手、それは甲冑姿をした武将だった。とは行っても、日本の感じではなく、中国の三国志に出てくるような。カブトの奥に美形の男性顔があったが、そのさらに奥に邪悪なものをエリコは感じ取った。
「あなたはだれ?」
「ここで名乗る必要はない」
彼はそう言うと、今度は右手に抱えていた槍を大きく掲げた。たちまちその先端から閃光が放たれる。
「な、何をするの!?」
「この建物ごと破壊する。痕跡を残されてはたまったものではないからな」
エリコはこのまま黙って見過ごすことはできなかった。
[[拳銃を取り出す!->28]]
[[走って取り押さえる!->94]]パン! パン!
エリコは拳銃を取り出し、武将に向けて発砲する。
「くっ、飛び道具か!」
目の前の武将は、思わず右手で顔を塞いだ。
「仕方がない、さらばだ」
そう言うとそれ以上は何もせず、武将は空へと消えていった。
「局長!」
エリコの叫びだけが、寂しく残った。
と、彼の去り際、捕らえられた局長倭から、一枚の紙切れが落ちるのをエリコはみかけた。今頃突撃でもしていたら見逃してしまうくらいの小さなものであった。
「何だろう?」
メモには鉛筆書きで地図が描いてあった。目印があるが、おそらくここに向かえば良いのだろう。
そしてその最後には、こんな一文があった。
「斉天大聖孫悟空を、頼れ」
[[次へ->18]]エリコは勇気を振り絞って言葉を発した。局長の存在を不用心に晒すことはJPSSの規則に反する行為であったが、今はしのごのためらっている時ではなかった。
正面の猿はしばらくこちらを威嚇していたが、やがて大人しくなった。
そして、
「JPSSの倭の関係者か? それは失礼した。何か妖怪が復讐しに来たのかと思ったんでね」
立派な日本語を話してきた。
「猿が、喋った」
「どうして驚いてるんだよ。俺が斉天大聖孫悟空だと知って封印をといたんだろうが」
「俺を呼び出したってことは、倭に何かあったってことなんだな」
「実は……」とエリコは、目の前の斉天大聖孫悟空に、事情を説明した。
[[次へ->42]]
† Column †
斉天大聖孫悟空
今から1200年ほど前の唐王朝の時、「斉天大聖」を名乗って天界で暴れた罪によって500年もの間五行山に閉じ込められていたところを玄奘三蔵に救われ旅に出る。猪八戒、沙悟浄らとともに立ちはだかる妖魔を倒しながら、ついに目的地の天竺に至る。孫悟空は「闘戦勝仏」という仏になっていたはずだった。「孫悟空さんよね? 助けて!」
しかし、その言葉に猿は耳を貸さなかった。相変わらず、エリコの周りを回っている。
これで通じないのなら、別な言葉をかけてみてはどうだろうか?
[[局長が大変なの!->72]]
[[落ち着かないと、撃つわよ、銃で!->13]]
[[(黙って捕まえようとする)->50]]「そういうことか、一大事だな」
悟空はそう言うと、エリコはかねてからの疑問を悟空にぶつけた。
「それにしても、なぜ局長と孫悟空さんは知り合いなの? しかもどうして日本なんかに?」
「事情を説明すると少し長くなるんだがな」
悟空が話したのは、以下のようなものであった。
西天天竺に三蔵一行とたどり着いて、贖罪を果たしたのが今から1200年前。
不老不死である孫悟空は、中国のある山奥の守り神として、元の体であった石に戻り長い眠りについていた。
それから月日は流れ、封印が解かれたのは80年ほど前の日中戦争時。武功を挙げ、中国側の英雄になった彼は、山奥の高寺の住職として過ごすことになった。
ところが今から50年ほど前、中国文化大革命が起こり、高寺も紅衛兵の焼き討ちと迫害の標的になった孫悟空。そこでJPSS局長・倭の手引きにより、日本に亡命をしたと言う。
「てな訳で今この神社で再び眠りについていたわけだ。倭は俺の恩人だ。だから倭に危機が迫っているなら協力するさ。」
「なるほど……」
局長の名前を真っ先に出してよかった、とエリコはホッとした。
「悟空さん、私たちはこれからどうしたらいい?」
「まずはそのJPSS本部に行こう。何かわかるかもしれない」
[[次へ->12]]「落ち着かないと、撃つわよ、銃で!」
拳銃を向け脅すエリコにも関わらず、その猿はその場から逃げようとする。
しびれを切らしたエリコは、ついに猿に発砲した。
パン! パン!
しかし、猿の皮膚は硬かった。もともと石でできていたから、当然であった。
猿は相変わらず、エリコの周りを回っている。
これで通じないのなら、別な言葉をかけてみてはどうだろうか?
[[孫悟空さんよね? 助けて!->91]]
[[局長が大変なの!->72]]
[[(黙って捕まえようとする)->50]]逃げ回る猿を追い回すこと30分。エリコはついに猿を捕まえることに成功した。
「重っ!」
今は猿だが、元は力石だ。あまりの重さに耐えきれず、エリコはすぐさま離してしまった。
猿は相変わらず、エリコの周りを回っている。
これで通じないのなら、別な言葉をかけてみてはどうだろうか?
[[孫悟空さんよね? 助けて!->91]]
[[局長が大変なの!->72]]
[[落ち着かないと、撃つわよ、銃で!->13]]誰もが寝静まった夜中。孫悟空の提案により、2人はJPSS本部前に来た。
この時間を選んだのは、敵を警戒してのことであった。
「やはり、50年も経つと建物は立派に改装されているもんだな」
「……誰もいないようね、中に行きましょう」
先ほど火災現場であったので、大量の封鎖テープが入り口付近に張り巡らされている。そこには警備のための警官が数人いたが、トラブルにならないよう、見つからずにすり抜けることにした。
ビルに侵入した2人は、焦げ臭さの中を走っていく。
「ひどくやられたようだな、ところで、まずはどこから調べるつもりだ?」
「地下に警備室がある。人は今いないようだけど、襲撃時のビデオとかが残っているかも」
[[次へ->95]]「何を言っているんだ? 早くしないと、局長がどうなるか分からないぞ」
「局長が言ってたの。何も考えずに戦いに挑むのは愚策だって。一旦冷静になって作戦立てて、装備も整えたほうが確実だと思う」
悟空は確かに、と思ったのか、歩くのをやめた。
「それもそうか。とりあえず一日で作戦立案と準備を行おう」
「その方がいいわね。悟空さんも準備をしてきたら?」
「ああ。幽冥界の閻魔大王のもとに俺の装備、紫金冠(しきんかん)、赧黄袍(しゃこうほう)、金帷子(きんかたびら)、歩雲履(ほうんり)をあずけている。エリコ、お前も一緒に行くか?」
「行くわ」
エリコは即答した。もしかしたらその途中で、何かいい考えが浮かぶかもしれないからだ。
「で、忍者の皆さんは……」
とエリコが言いかけた時、ナツから意見具申がった。
「エリコ殿、一つ提案がある。あなたたちの準備の間、我々が天界で局長を探してくるのはどうだろうか?」
「それもそうね、悟空さん、天界へはどうやっていくの?」
「行き方だけ教えれば、あとは空を飛んでいくだけだが。お前ら空を飛べるか?」
「ムササビの術で、お安いご用よん!」
ハルは気合いを見せてきた。
悟空は天界への秘密の行き方を忍者衆に教えると、すぐさま忍者衆は警備室を出ていった。
「俺たちも行くぞ」
「幽冥界って、どこにあるの?」
「地下深くだ。お前も死ねば、そこに行くことになっている」
エリコはぞくりとしながらも、悟空に続いて幽冥界へと向かった。悟空たちはここでは書き表せない特殊な方法で、幽冥界へと向かっていく。
[[次へ->36]]
† Column †
幽冥界
三途の川を超えた先にある、閻魔大王がいる死者の世界。この中に極楽と地獄がある。
ちなみに悟空はここでも暴れた過去がある。「なに、すぐ戻ってくる」
悟空はそう言うと、警備室から出て行った。エリコと忍者衆は呆然と、その後ろ姿を見送った。
それから数日の間、エリコは悟空のことを待っていた。しかし、音沙汰は一切なくなった。
そしてようやく天界から現れたのは、例の天の神将だった。
彼は合図を送ると、世界は光に包まれ、消滅した。
『END 悟空、消息不明』
[[最初へ->1]]「これはこれは斉天大聖殿、お待ち申し上げておりました」
幽冥界の宮殿の大広間に、閻魔はいた。貫禄のある髭に体格。しかし想像と違って、悟空に対しては一段と丁寧であった。
「元気にしてたか? 閻魔。預けていた俺の装備一式を持ってきてくれ。あ、ちなみにこいつは俺の相棒だ」
悟空の紹介を受け、エリコは丁寧に一礼した。
「承知しました。それでは奥へどうぞ」
悟空は着替えのため、大広間の奥へと入っていく。
「それにしても閻魔大王と悟空さんが、知り合いだったなんて」
閻魔と2人になったエリコは、思わず呟いた。
「昔、間違って大聖殿を死者として呼び寄せてしまった事があってな。その時に脅され……、いえ、懇意にさせてもらったもので」
閻魔の懇切丁寧な説明に、エリコは西遊記での一幕を思い出した。
孫悟空は閻魔を脅し、閻魔帳の自分の寿命を筆で黒く塗りつぶした事で不老不死を得たことは、西遊記にも書かれている。
そうこうしているうちに、孫悟空が戻ってきた。元々は裸の猿だったのが、今では見違えて立派な衣類と靴、兜までもつけている。
「全部揃ってた。さすがは閻魔だな。管理はきちんとしててくれたようだな」
ここで閻魔が、そうだ、と何かを思い出したかのように言うと、
「そうそう、言い忘れておりました。天界から客人がいらっしゃってまして」
[[次へ->97]]
† Column †
・閻魔帳
人の名前と寿命が書かれた閻魔大王の書類。悟空は自分の名前の欄を消したことで死ななくなった。「正直でよろしい」
太上老君は微笑んだ。
「わしも大聖には色々助けられた身でな。元々わしの召使いだった金角・銀角が下界に逃げ悪さをした時、倒して身柄を引き渡してくれたのも彼じゃからの。せっかくじゃ。これを持って行くがよい」
そう言うと、太上老君はエリコに白い小袋を渡してきた。
「なんでしょうか? これ」
「大聖に聞けばわかるじゃろう。これで少なくとも、大聖の足手まといにはならんじゃろうて。さあ、大聖を追いかけるのじゃ」
エリコは閻魔、太上老君の見送りを背に悟空を追いかけた。
悟空に追いつくと、早速彼は聞いてきた。
「ジジイから何かもらったのか?」
「うん、これ」
悟空はエリコがもらった小さい袋の中を見ると、驚いた。
「こいつは懐かしいな。如意仏宝なんて。お前こんなものもらったのか」
「如意仏法?」
「金角・銀角が持っていた5つの武器だ。かつて俺も散々それに苦しめられた。強いものだから、決してなくすなよ」
2人は地上に戻る。明日に向けて睡眠を取るときはときにはすでに日付をまたいでいた。
※『如意仏宝』を手に入れた。
[[次へ->43]]
† Colimn †
如意仏宝
かつて金角・銀角が持っていた、「如意」の字のごとく意のままに大きさを変えられる5つの武器。今は白い巾着袋の中に小さくしてしまい込んでいる。以下の5つの種類がある。
・紅瓢箪 ・琥珀瓶 ・幌金縄・七星宝剣 ・芭蕉扇 エリコの決心したその表情を見て、太上老君は安心した。
「その意気があるのなら、大丈夫かもしれぬな。今のお主にはアレを渡さなくて大丈夫じゃろう」
意味深な言葉であったが、エリコはまあいいか、と深くは聞かないことにした。
「わしも大聖には色々助けられた身でな。元々わしの召使いだった金角・銀角が下界に逃げ悪さをした時、倒して身柄を引き渡してくれたのも彼じゃからの。奴のこと、頼んだぞ」
「はい!」
エリコは閻魔、太上老君の見送りを背に悟空を追いかけた。
悟空に追いつくと、早速彼は聞いてきた。
「ジジイに何か言われたのか?」
「まあね、頑張れって」
「そうか」
2人はそのまま地上に戻る。明日に向けて睡眠を取るときはときにはすでに日付をまたいでいた。
[[次へ->43]]「……わかった。どうしても行きたいと言うのなら、ついてこい」
悟空はどうしてもと言い張るエリコを前に、ついに折れざるを得なかった。
エリコは孫悟空と天界に向かった。
しかし天界は広い。局長がどこに捕まっているかも検討もついていない中、しらみつぶしに探すしか方法はなかった。
「何者だ!?」
ついに警備の神将に発見された。二人は必死に抵抗したものの、ついに捕らわれてしまった。
無策だったのが仇になってしまった。
二人は局長と一緒のところに捕らえられた。そしてそれから数日後、何かの力によって消滅してしまったのである。
『END 不法侵入で逮捕』
[[最初へ->1]]翌朝、支度を終えたエリコ、孫悟空、忍者四人衆はJPSSビルの警備室に集合した。
「局長の位置が判明した。天界、西天門近くにある白虎宮という建物に閉じ込められている。しかも他の天界の神将も幾人か一緒に捕まっていた」
「分かった。エリコ、作戦はどうする?」
「一つ考えている。二手に分けて、片方が他の入り口から侵入して陽動、もう片方で西天門を通って局長を助けるわ」
エリコが一晩練った作戦だ。忍者のナツも頷いた。
「順当な作戦だな。我々忍者衆と、そなたら二人で分けよう。それで、エリコ殿はどっちに行くのだ?」
ナツの質問に、エリコはこう答えた。
A 忍者衆が陽動要員。悟空とエリコが局長を救出。
B 悟空とエリコが陽動要員。忍者衆が局長を救出。
[[A案にしましょう->47]]
[[B案の方にするわ->96]]ハルが北天門、ナツが東天門、フユが南天門からそれぞれ侵入し、天界の敵を引きつける。その隙に悟空、エリコが遅れて西天門からこっそり侵入し、近くの白虎宮で局長を探すという作戦だ。ちなみにアキは狙撃要因として、屋根の上から敵を撹乱する遊撃要因だ。
「では、行って参る。局長はお頼み申す!」
「二人も頑張ってねえん〜」
「危機になったら、いつでも呼んでくれ。すぐ向かう」
「ウム……」
ナツ、ハル、アキ、フユはそれぞれ言葉を送ると、背中のマントのような布を目一杯広げた。
「「忍法・ムササビの術!!」」
四人はそう唱えると、一斉に空高く舞い上がった。そのまま天界へ向けて一直線に進んでいく。
「準備はいいか?」
四人の姿が見えなくなったところで、悟空はエリコを見た。
「うん……」
エリコの顔はこわばっていた。初任務が、こんなに大きいものだなんて。
「では行くか。筋斗雲!」
悟空の呼びかけに応じて、何かが空のかなたから飛んでくるのが見えた。金色の小さな雲が、こちらに向かって飛んできている。その雲は悟空の前で、律儀にもピタリと止まった。
「これが……筋斗雲」
本物の筋斗雲に、エリコは不安も忘れて感激していた。悟空は華麗なとんぼ返りを見せて、その小雲にとんぼ返りで飛び乗った。
「お前はなにで空を飛ぶんだ?」
「私は大丈夫」
エリコはスマートフォンを取り出すと、シグナルを送った。たちまちJPSSのガンシップが自動運転で飛んでくる。そのオスプレイのような二枚の丸いプロペラが特徴的な戦闘ヘリは、局長のみならず多くの人員を収容可能で脱出にはもってこいであった。エリコはガンシップに飛び乗りコクピットに座ると、その席から悟空に出撃準備完了の合図を送った。
「たまげたぜ。人間の技術がここまで発展してるとはな」
こうして筋斗雲とガンシップは、並んで上空へ向かっていった。
[[次へ->98]]「分かった。ではそちらが暴れている隙に、拙者たちはガンシップで局長を救い出せばいいのだな?」
ナツが確認を取る。ガンシップとは、オスプレイに似たJPSSの戦闘ヘリのことである。
「局長のことは任せました」
エリコはそう言うと、孫悟空と一緒に警備室を出て行った。
こうしてJPSS本部ビルの屋上に出た二人。自動でオスプレイを呼び出そうとするエリコを、悟空は制止した。
「俺の筋斗雲の方が、早く着くぞ」
「筋斗雲? あの噂の?」
悟空は「筋斗雲!」と大きく呼び寄せると、颯爽と金色の小雲が現れ、悟空の目の前に来る。すかさず悟空はとんぼ返りでそれに飛び乗った。
エリコも恐る恐るそれに乗り込む。乗った感触は少し柔らかく、バランスをとるのが難しかった為、悟空にしがみつく感じになった。
「どれくらいのスピードで飛ぶの?」
「10万8000里をひとっ飛びだから、振り落とされないように気をつけろよ!」
その瞬間、筋斗雲は猛烈なスピードで爆走した。エリコの顔面に、ものすごい風圧がぶち当たる。
「だずげでえええええええ!」
「久しぶりに使うが、やはり健在だったな、筋斗雲」
筋斗雲は、雲の中を駆け抜けて行った。
[[次へ->99]]二郎神君。
天下無双を誇った孫悟空が、唯一完敗した相手だ。天帝の甥でもあるその武神は、かつて天界で大暴れし、数多の神将を倒しに倒しまくった孫悟空を圧倒的な武術と知力で叩きのめし、ついに捕らえることをやってのけた。武器である三尖両刃刀と呼ばれる槍は、悟空の石肌をも貫ける威力を持つ。
そのことを思い出したエリコ。悟空を不安の眼差しで見つめる。
「悟空、かつてあなたを倒した相手じゃ分が悪い。ここは一旦」
「俺が時間を稼ぐ。お前は倭たちを連れて逃げてくれ」
……今はそれが最善だろう。そう思ったエリコは、局長たちを連れ、屋敷を後にした。
孫悟空は小さくした如意棒を右耳から取り出し、大きくすると二郎神君に向け構えた。
「これで二人きりになったな。三蔵との旅の時にいくつか世話になったとはいえ、お前にはでかい借りがあるからな。再び勝負できるなんて嬉しい限りだぜ。ところでなぜこんなことをしでかしたんだ?」
「お前に話す必要はない。ふん、お前が私に負けた日のことを、再び思い出させてやろう!」
こうして二人のリベンジマッチが、再び開かれたのであった。
二人の激しいせめぎ合いは、白虎宮の建物をいつの間にか木っ端微塵にする程度であった。外に出た二人は一段と激しくなり、天界の街の屋根から屋根へ飛び回るものになった。
長らく戦っていなかったせいか、次第に悟空が押され始める。
ついに天界の中心である霊霄宮(れいしょうきゅう)の前で、悟空は腹に槍をもらった。
「ぐっ……!」
悟空は霊霄宮の建物に一気に叩きつけられた。その衝撃の威力は、霊霄宮は一気に崩れ去るくらいであった。
瓦礫の中で、もはや悟空は立てなかった。
「ふははははは! この1200年間見ないうちにここまで弱くなったのか! これで天界を荒らしたとは口ほどにもないな!」
「く……そ……。やはりだめだ、強すぎる」
「所詮、お前は三蔵と天竺に行くためだけの伝説に過ぎなかったのだ。古びた英雄の伝説は終わりを迎えるものだとな。さらばだ、斉天大聖」
悟空の胸に、槍が振り下ろされた。
その刹那。ボン!とあたりが白煙に包まれた。たちまち二郎神君と悟空の視界が遮られる。
「間に合った。孫悟空殿、歩けるうちに逃げろ」
その声は忍者アキだった。煙玉の術を使い、孫悟空を助けに戻ったのだ。
「……さすがは倭の部下だな。助かったぜ」
悟空はなんとか煙の中から脱出した。二郎神君は追って来なかった。
エリコは西天門で、満身創痍の孫悟空を出迎えた。
「やはり、相手は相当手強いようね。ターゲットは無事に避難させた。手当はガンシップ内で局長が行うわ」
と、違和感を感じたエリコ。空を振り返ると、
「悟空さん、あれ」
天空に現れたのはなんと巨大な帆船だった。まるでそれは、空を覆い尽くさんとしていた。
「虹龍船だと……」
悟空はしばらくあっけにとられていたが、すぐにエリコに向かって叫んだ。
「まずいぞ! エリコ! 早く乗り物へ!」
言われるがままに2人はガッシップに乗り込む。エリコはすかさず発進させ、天界を後にした。
[[次へ->56]]
† Column †
虹龍船
天帝が所有する飛空戦艦。そこから出される光線は、高威力。かつて対孫悟空用に作られたが、今はその目的も消え、天界の奥深くに眠っていたはずだった。二郎神君。
天下無双を誇った孫悟空が、唯一完敗した相手だ。天帝の甥でもあるその武神は、かつて天界で大暴れし、数多の神将を倒しに倒しまくった孫悟空を圧倒的な武術と知力で叩きのめし、ついに捕らえることをやってのけた。武器である三尖両刃刀と呼ばれる槍は、悟空の石肌をも貫ける威力を持つ。
そのことを思い出したエリコ。悟空を不安の眼差しで見つめる。
「悟空、かつてあなたを倒した相手じゃ分が悪い。大丈夫?」
「……下がっててくれ」
「どうして、正義の武神であるお前がこんなことを?」
「お前に話す必要はない」
「なら、意地でも話してもらう。今度こそお前を倒す!」
「なら、お前が私に負けた日のことを、再び思い出させてやろう!」
こうして二人のリベンジマッチが、再び開かれたのであった。
二人の激しいせめぎ合いの威力で、周りに衝撃がもたらされる。飛んでくる瓦礫を、エリコはかわすのに必死だった。
「だめ、このままここにいるのは無理!」
「エリコ、お前は南天門まで逃げろ! 巻き込まれないようにな!」
鍔迫り合いをする孫悟空を横目に、エリコは走って戦線を離脱した。
二人だけの戦いは、次第に孫悟空が押されていく。ついに天界の中心である霊霄宮(れいしょうきゅう)の前で、悟空は腹に槍をもらった。
「ぐっ……!」
悟空は霊霄宮の建物に一気に叩きつけられた。その衝撃の威力は、霊霄宮は一気に崩れ去るくらいであった。
瓦礫の中で、もはや悟空は立てなかった。
「ふははははは! この1200年間見ないうちにここまで弱くなったのか! これで天界を荒らしたとは口ほどにもないな!」
「く……そ……。やはりだめだ、強すぎる」
「所詮、お前は三蔵と天竺に行くためだけの伝説に過ぎなかったのだ。古びた英雄の伝説は終わりを迎えるものだとな。さらばだ、斉天大聖」
悟空の胸に、槍が振り下ろされた。
その刹那。ボン!とあたりが白煙に包まれた。たちまち二郎神君と悟空の視界が遮られる。
「間に合った。孫悟空殿、歩けるうちに逃げろ」
その声は忍者アキだった。煙玉の術を使い、孫悟空を助けに戻ったのだ。
「……さすがは倭の部下だな。助かったぜ」
悟空はなんとか煙の中から脱出した。二郎神君は追って来なかった。
エリコは南天門で、満身創痍の孫悟空を出迎えた。
「やはり、相手は相当手強いようね。たった今忍者衆から、局長と捕まってた神将たちを全員ガンシップに載せたと言う報告が入ったわ」
「……それは良かった」
ふとエリコは空を見上げると、
「悟空さん、あれ」
そこにあったのは、巨大な帆船だった。まるでそれは、空を覆い尽くさんとしていた。
「虹龍船だと……」
悟空はしばらくあっけにとられていたが、
「まずい、早く脱出するぞ。筋斗雲!」
エリコと一緒に、すかさず天界を後にした。
[[次へ->21]]
† Column †
虹龍船
天帝が所有する飛空戦艦。そこから出される光線は、高威力。かつて対孫悟空用に作られたが、今はその目的も消え、天界の奥深くに眠っていたはずだった。「斉天大聖、そして東夷の平和機関の連中よ! 今の我々の力の前には、天界だってこの通りだ。今から8日後、お前達の住む地上も同じになるだろう! それまでせいぜい悪あがきでもするがいい。はっはっは!」
二郎神君の気高い声は、遠くガンシップにも十分響き渡っていた。
「天界が……」
「一瞬で……」
神将達が唖然とその様子を見ている中で、エリコは無線を飛ばす。
「忍者部隊、そちらの状況は!? 大丈夫?」
『なんとかムササビの術で脱出に成功した。全員な。それぞれ離れ離れだが、世界のどこかには着地できるだろう』
エリコは一旦ホッとした。悟空の方は脱出した天界の人々が見守る中、局長倭によって傷が治療されていた。
「ひとまずは応急処置はできた。だがあくまで応急処置だ。ちゃんとしたところで治療する必要があるな。斉天大聖、君の故郷に行く。いいな?」
「……わかった」
悟空はそのまま横たわる。エリコは倭の方を見た。
「故郷ってまさか」
「ナビにはすでに登録した。エージェントエリコ、目的地に向かってまっすぐ飛んでくれ」
エリコは操縦桿を、ナビが指し示す方向へと向けた。
[[次へ->3]]筋斗雲で天界から脱出し、空を疾走する二人は、ついに目標の飛行中のガンシップを目視した。
「こちらエージェント、エリコ。局長、ご無事でしょうか?」
『ああ、無事だ。今、君たちを収容するためにハッチを開く』
局長の声は、健在だった。ガンシップ後部のハッチが開き、筋斗雲はその中に入っていった。
ガンシップの中には、操縦席に座る局長と、数人の捕まっていた天の神将たちがいた。
「ご無事で何よりです。局長」
「君ならやってくれると信じていた。ありがとう。斉天大聖の面倒は私が見るから、操縦を交代してほしい」
「あれ、忍者衆の四人は?」
「私たちが逃げた時に追っ手が迫っていてね。時間稼ぎで残った。後から合流するらしい」
エリコと操縦を交代した局長・倭は、傷ついた孫悟空に歩み寄った。
「斉天大聖。久しぶりだな」
「倭か。久しぶりに会うのなら、こんな無様な姿でなければ良かった」
その時、一人の神将が
「局長殿、あれ!」
指差した先には、虹龍船が天界を光線ビームで破壊していく様子が目に見えた。
「斉天大聖、そして東夷の平和機関の連中よ! 今の我々の力の前には、天界だってこの通りだ。今から8日後、お前達の住む地上も同じになるだろう! それまでせいぜい悪あがきでもするがいい。はっはっは!」
二郎神君の気高い声は、遠くガンシップにも十分響き渡っていた。
「天界が……」
「一瞬で……」
神将達が唖然とその様子を見ている中で、エリコは無線を飛ばす。
「忍者部隊、そちらの状況は!? 大丈夫?」
『なんとかムササビの術で脱出に成功した。全員な。それぞれ離れ離れだが、世界のどこかには着地できるだろう』
エリコは一旦ホッとした。
悟空は脱出した天界の人々が見守る中、局長倭によって傷が治療されていた。
「ひとまずは応急処置はできた。だがあくまで応急処置だ。ちゃんとしたところで治療する必要があるな。斉天大聖、君の故郷に行く。いいな?」
「……わかった」
悟空はそのまま横たわる。エリコは倭の方を見た。
「故郷ってまさか」
「ナビにはすでに登録した。エージェントエリコ、目的地に向かってまっすぐ飛んでくれ」
エリコは操縦桿を、ナビが指し示す方向へと向けた。
[[次へ->3]]その島は太平洋のど真ん中にあった。噴煙はもう吹き出してはいないが、見た目は完全に火山島で、海面に山が突き出している。
「この島が、花果山?」
エリコはその島を不思議な目で見ていた。局長・倭が説明する。
「斉天大聖の故郷だ。彼はもともと、火山島の洞窟『水廉洞』に住む猿たちの王だったことは知っているだろう?」
麓にガンシップを停めると、そこには南国ならではの密林が広がっていた。悟空は神将達に担架で運ばれながら降りた。
「こっちだ」
どうやら局長・倭は居場所を知っているらしい。彼を先頭に、密林をかき分け一行は進んでいった。
しばらくジャングルを歩いていると、たちまち武器を持った大量の猿たちに囲まれた。
「お主ら、何者じゃ!」
正面から長老と思しき老猿の姿が現れる。が、たちまち担架に運ばれた悟空の姿を見ると、
「王様! お久しゅうございます!」
「久し振りだってのに、情けない姿ですまんな」
悟空は言った。エリコは不思議に思い、老猿に話しかけた。
「お久しゅうって、あなたたちも不老不死なの?」
「ええ。王様のおかげです。あの方が幽冥界の閻魔帳から自身の名を消した際、ついでにわしらの名も消してくださってもので……。ちなみに私の名は馬元帥と申します」
エリコたちはそのような話を聞きながら、水廉洞へと向かっていった。
水廉洞は洞窟とはいえ、人が住むにも快適なところであった。
エリコは割り当てられた自分の部屋に荷物を置くと、悟空のところへ見舞いに行った。
「残念ながら、もう俺は力になれそうにない」
悟空からは予想だにしない言葉が飛び出してきた。
「どうして?」
「俺は長らくまともな戦いをしていないがゆえにここまで弱くなってしまった。自分が情けない。倭にもそう伝えてくれ」
「でも……」
エリコは説得をしようにも、どのようにすればいいか分からなかった。結局エリコは無言で部屋を出るしかなかった。
[[次へ->40]]
† Column †
花果山(かかざん)と水廉洞(すいれんどう)
今から1700年前、花果山の頂上から一個の丸石が生まれた。それがみるみる猿の形になり、やがて本物の中では美形の猿になった。これが後の孫悟空であり、当初は美猴王と呼ばれ水廉洞の猿の王になった。
周りの霧のおかげでかつて人から発見されることはなかったが、現代の人間技術が進歩すると、孫悟空の要請を受けた平和機関JPSSの協力のもと、人工衛星にも探知されないように技術改造された。
倭は孫悟空と、有事の際には花果山を借りると約束していたらしい。「そうか。大聖はそんな事を」
新しく水廉洞に設置された司令室で、話を聞いた局長・倭は深く頷く。
「しかし局長、世界を救うには彼が必要です。局長からも説得を」
「無駄だ。大聖の頑なさは『西遊記』を見てても明らかだ。やはり彼の代わりを連れてくるしかあるまい」
「……あてがあるのでしょうか」
「一応な。他にもJPSSには数多くのヒーローが所属している。彼らを呼ぶことにする」
局長・倭は思い切って口を開いた。
「なるべく全員だ! JPSSの臨時本部をこの花果山に設置し、世界中に散らばっているヒーローおよびJPSSエージェントを集結させる。エージェントエリコ、君のガンシップで各地のヒーロー及び、各地に散り散りになった忍者衆の回収を任せる」
局長の本格的な指令に、エリコは興奮を覚えながら、
「了解しました。七日でできるところまで、やってみます!」
と、彼に対して敬礼する。
「ああ、アジンベーズ計画の発動だ」
こうして、JPSSのヒーロー招集計画、アジンベーズ計画が発動されたのであった。
[[次へ->55]]世界に散らばるJPSS所属ヒーローと忍者たち。残り7日の間に、彼らをできるだけ連れてこよう!
次の選択肢からどのような行動をとるのか、誰を選ぶのかを選択せよ!
・一刻も早く、ヒーローを呼ぼう! 誰を呼びに行く?
[[キャプテン・ジャパン->93]]
日の丸の陣笠を盾、日本刀を駆使する旧日本軍の兵士。硫黄島でのキャプテン・ア●リカとの決闘は有名。実際盗んだ彼の情報をもとに作られている。戦後GHQと科学者ハワード・スタークによって凍結させられ、現在北海道の山奥の洞窟の中にしまわれている。武士道の精神が詰まっている。
[[戦狼・開陽丸->25]]
731部隊の集大成として「丸太」から改造された兵器人間。月の光を浴びると、狼になり、怪力を駆使することができる。主に中国戦線で戦い、その時の孫悟空と対峙したことも。おかげで寿命が2倍に伸びた彼は、今も太平洋上の孤島で静かに暮らしている。普段はおとなしいが、狼になると凶暴化。
[[タメドロイド->22]]
伝説の弓使いの武将、源為朝の精神を受け継いで作られたアンドロイド。伝説通り右手が左手よりも長くなっており、彼の放つ剛弓は百発百中。元々は日本軍の秘密兵器として設計されたが、終戦で頓挫。その後のJPSSの試行錯誤の研究で10年前にようやく完成した。今は為朝ゆかりの八丈島のJPSSの施設で待機状態。
[[忍者ハル->61]]
手裏剣、忍具の使い手であるくノ一。お調子者で桃色がトレードマーク。彼女がつけてるビーコン情報によれば、現在マチュピチュ。
[[忍者ナツ->33]]
忍者衆のリーダー及び忍術の使い手。熱血漢で、赤がトレードマーク。彼がつけてるビーコン情報によれば、現在サハラ砂漠。
[[忍者アキ->73]]
吹き矢の狙撃を得意とするくノ一。冷静な性格で橙がトレードマーク。彼女がつけてるビーコン情報によれば、現在香港。
[[忍者フユ->89]]
鎖鎌を自在に操る。無口でほとんど話さない。青がトレードマーク。彼がつけてるビーコン情報によれば、現在シベリア。
・それとも、
[[誰にするか、1日使ってじっくり考えよう->46]]「キャプテン・ジャパンか。彼なら70年前くらい前から北海道で冷凍保存されているはずだ」
「今こそ解凍するべき時です。行きましょう」
エリコ、局長・倭の一行は、北海道のとある洞窟に向かった。降りて洞窟の中を進むと、氷漬けにされた広い空間に突き当たる。その真ん中に、分厚い氷に覆われた、キャプテンジャパンが眠っていた。噂通り、白いタイツの腹部には日の丸。強靭な肉体は今でも健在であった。
「では早速、解凍しましょう。局長、どうすれば?」
「確か近くに……、あった。解凍装置だ。早速起動させよう」
[[次へ->53]]
※ここで『火遁の術』が使えるキャラクターがいれば、発動することができます
[[『火遁の術』、発動!->76]]「開陽丸か。彼はもう戦いから手を引きたいと考えていたから、果たして要求に応じるかどうかは分からんがね」
局長・倭はそう言ってはいるものの、エリコと一緒に開陽丸が住むとされる太平洋の島に向かうことになった。
一行は島に降り立つ。島にはジャングルが生い茂っており、闇雲に入って探すのは危険だったが、それでも入るしかなかった。
「固まって移動しよう。エージェントエリコ、先頭を任せてもいいか?」
「了解です。私の後を付いてきてください」
エリコは草木をかき分け、密林の奥へ奥へと進んでいった。
[[次へ->62]]
※ここで『探索の術』が使えるキャラクターがいれば、発動することができます
[[探索の術、発動!->79]]早速八丈島に向かうと、島の山奥にJPSSの古びた研究施設が、廃墟のように置かれていた。
「不気味ね……」
「長らく放置されていたからな。好んで近寄る者はいないだろうから、おそらくタメドロイドは健在だ」
施設の錆びた大扉を開け、中に侵入していく。エリコは帰りたい気持ちを抑えながらも、ついに廃墟の奥にある研究室にたどり着いた。
研究室の正面に、武士の甲冑があった。大鎧というであろう重武装のロボットが、目の前の相手を睨みつけるかのように鎮座していた。その背中には弓と矢を装備している。
「これは幽霊と勘違いするレベルね。局長、早く起動させましょう」
「わかった、確か起動装置があったはず」
脇にあった古めかしいコンピューターを起動させ、局長は色々いじくりまわした。しばらくすると、
「思い出した。こいつの起動には専用の鍵が必要だった。それさえあれば、起動できるが……」
[[次へ->32]]
※ここで『タメドロイドの鍵』を持っているキャラクターがいれば、ここで使用することができます
[[タメドロイドの鍵、使用!->51]]忍者ハルは、なんとペルーのマチュピチュにまで飛ばされていた。
エリコが迎えにいき、ハルを収容する。
「地球の裏側までわざわざありがとう。おかげで十分観光できたわん」
「良かったわ。他のヒーローを迎えにいく時、一緒に行動して」
エリコはそう言うと、花果山への帰路に着いた。
※ハルの忍術、『探索の術』が使用可能になった!
※ガンシップで移動→2日経過。『???』で移動→1日経過。
※この時点でまだ7日が経過していない場合、戻って別のヒーローの元へ向かうことができます。
7日が経過した場合、時間切れとなり、決戦へ進みます。
[[まだ時間はある!->55]]
[[7日目が過ぎた……->30]]忍者ナツは、なんとサハラ砂漠のど真ん中を放浪していた。
エリコが迎えにいき、行き倒れかけていたナツを収容する。
「かたじけない。もう少しで死ぬところを助けられたからには、死力を尽くさねばな」
「良かったわ。他のヒーローを迎えにいく時、一緒に行動して」
エリコはそう言うと、花果山への帰路に着いた。
※ナツの忍術、『火遁の術』が使用可能になった!
※ガンシップで移動→2日経過。『???』で移動→1日経過。
※この時点でまだ7日が経過していない場合、戻って別のヒーローの元へ向かうことができます。
7日が経過した場合、時間切れとなり、決戦へ進みます。
[[まだ時間はある!->55]]
[[7日目が過ぎた……->30]]忍者アキは、なんと香港にまで飛ばされていた。
エリコが迎えにいき、夜の人気のないところでアキを収容する。
「現地語がわからなくて困っていたところだった。私が夜の狙撃用につかう月光を出す術があるのだが、必要になったら使ってくれたまえ」
「良かったわ。他のヒーローを迎えにいく時、一緒に行動して」
エリコはそう言うと、花果山への帰路に着いた。
※アキの忍術、『月光の術』が使用可能になった!
※ガンシップで移動→2日経過。『???』で移動→1日経過。
※この時点でまだ7日が経過していない場合、戻って別のヒーローの元へ向かうことができます。
7日が経過した場合、時間切れとなり、決戦へ進みます。
[[まだ時間はある!->55]]
[[7日目が過ぎた……->30]]忍者フユは、雪が積もるシベリアの針葉林にまで飛ばされていた。
エリコが迎えにいき、フユを収容する。
「……こう見えて寒さは苦手だ。感謝致す」
「良かったわ。他のヒーローを迎えにいく時、一緒に行動して」
エリコはそう言うと、花果山への帰路に着いた。
※フユが所有する、『タメドロイドの鍵』が使用可能になった!
※ガンシップで移動→2日経過。『???』で移動→1日経過。
※この時点でまだ7日が経過していない場合、戻って別のヒーローの元へ向かうことができます。
7日が経過した場合、時間切れとなり、決戦へ進みます。
[[まだ時間はある!->55]]
[[7日目が過ぎた……->30]]※7人のヒーローのうち、ここまでで何人呼ぶことができたかを覚えておくこと。
ついに7日目の夜が経過した。
エリコはできることだけのことはやったつもりだ。明日の決戦に向け、エリコは休眠に入ろうとした。
と、ここで今一度、孫悟空の元を訪れることにした。部屋に入ると、悟空はベッドから起き上がれるくらいにまで回復していた。
「これなら明日は余裕で戦えるわね」
「体調の方は回復した。しかし、手柄は他のやつに任せる」
「二郎神君とは、あなたが戦うから意味があると思うけど」
エリコはそう言うものの、それ以上は言わなかった。
英雄でもない自分が、英雄に戦えなどと言う権利はない、そう思ったからだ。なら……。
「それじゃ、また明日」
エリコは部屋を出る。その顔は、すでに決意に満ちていた。
[[次へ->17]]「花果山、浮上開始!」
翌朝、約束の二郎神君の総攻撃の朝、局長倭が戦争の火蓋を切ることになった。水廉洞内に激しい地鳴りが響き渡る。
エリコが外を確認すると、花果山が空に向かってじわじわと浮上している。
これもれっきとした作戦であった。まずはこの浮遊した花果山で敵の注意を引きつける。ここに攻め込んでくる敵たちを防衛戦で各個撃破し、その勢いのまま虹龍船に反撃をかけるというものであった。
「山が動くなんて、どんな仕組み何ですか?」
エリコは倭に尋ねる。
「反重力装置をこの山の底に設置してある。長年着々と、密かに改造計画を行っていてな。目立つこれで二郎神君の部下どももこちらに気づいて攻撃してくるだろう」
それから数時間後、司令室の方で報告があがった。
「虹龍船の接近を確認! まっすぐこちらに向かってきます!」
倭の頰には、汗が一筋。いよいよだ。
「いよいよですね。私も準備をしてきます」
エリコは自分の戦闘準備のため、一旦司令部から離れることにした。
武器庫に向かうと、そこには複数の武器が置いてあった。
自分にあった武器を選ばねば。そこでエリコが手にしたのは、
[[マシンガン->24]]
JPSS戦闘員の標準武器。形式はM4。
[[ロケットランチャー->8]]
RPG。先に六家と弾頭を飛ばす高威力の武器。
[[日本刀->4]]
高質の玉鋼でできた、近接武器。
※以下、『如意仏法』を持っていれば選べます
[[そういえば->80]]エリコは思い出した。自分には太上老君からもらった『如意仏法』があるということを。
エリコは七星宝剣を袋から取り出す。手頃な大きさに変え、背中に吊るした。銀色の刃に、装飾された銀色の柄。さすがは、かつて悟空の如意棒と互角に渡り合ったという武器だ。
「まさか、それは七星宝剣……?」
司令室に戻ると局長・倭は、エリコの刀をみて驚愕の表情を浮かべていた。他のエージェントたちも、奇怪な目でエリコを見ていた。
「私、物語の騎士に憧れてて。今回はこの刀をメインに使って戦ってみます。他にも太上老君さんからもらった如意仏法を駆使して」
「金角・銀角の武器じゃないか。もともと太上老君の所有物だとはいえ、まさか君に持たせるとはな」
局長は一通りそう言ったものの、最後には
「似合ってるじゃないか」
と、エリコを褒めた。
「ありがとうございます。……私、これから単独で、虹龍船に乗り込もうと思います」
「……君は何を言っているのだね? 君はここの防御に徹するはずだ。作戦通りしたまえ」
「こうでもしないと、悟空さんは動かないんです! お許しください!」
「あ、待て!」
エリコは司令所から走り去る。衛兵が追い縋ろうとしてきたものの、ついには一機のガンシップを奪って空に逃げることに成功した。間も無く敵が襲来する時に、ここまでくれば諦めてくれるだろう。
「悟空さんがやらないのなら、私がやらなきゃ。助けてもらってばかりじゃダメ」
エリコはそう言い聞かせながら、操縦桿を握っていた。虹龍船から花果山に向かってくる敵にみつからないように、雲の中を迂回しながら進んでいった。
[[次へ->86]]エリコはマシンガンを手にすると、背中にしまった。
司令室に戻ると局長・倭は、
「マシンガンか。順当だな」
と、言うにとどまった。
エリコは決意の表情をしながらはっきりと言った。
「……私、これから単独で、虹龍船に乗り込もうと思います」
「……君は何を言っているのだね? 君はここの防御に徹するはずだ。作戦通りしたまえ」
「こうでもしないと、悟空さんは動かないんです! お許しください!」
「あ、待て!」
エリコは司令所から走り去る。衛兵が追い縋ろうとしてきたものの、ついには一機のガンシップを奪って空に逃げることに成功した。間も無く敵が襲来する時に、ここまでくれば諦めてくれるだろう。
「悟空さんがやらないのなら、私がやらなきゃ。助けてもらってばかりじゃダメ」
エリコはそう言い聞かせながら、操縦桿を握っていた。虹龍船から花果山に向かってくる敵にみつからないように、雲の中を迂回しながら進んでいった。
[[次へ->38]]エリコは日本刀を手にすると、背中にさげた。
司令室に戻ると局長・倭は、エリコの刀をみて少し驚いていた。
「まさか、日本刀で戦おうとするとは思わなかったな」
「私、物語の騎士に憧れてて。今回はこの刀をメインに使って戦ってみます」
「無謀な気がするが、似合ってるじゃないか」
「ありがとうございます。……私、これから単独で、虹龍船に乗り込もうと思います」
「……君は何を言っているのだね? 君はここの防御に徹するはずだ。作戦通りしたまえ」
「こうでもしないと、悟空さんは動かないんです! お許しください!」
「あ、待て!」
エリコは司令所から走り去る。衛兵が追い縋ろうとしてきたものの、ついには一機のガンシップを奪って空に逃げることに成功した。間も無く敵が襲来する時に、ここまでくれば諦めてくれるだろう。
「悟空さんがやらないのなら、私がやらなきゃ。助けてもらってばかりじゃダメ」
エリコはそう言い聞かせながら、操縦桿を握っていた。虹龍船から花果山に向かってくる敵にみつからないように、雲の中を迂回しながら進んでいった。
[[次へ->41]]エリコはロケットランチャーを手にすると、背中にしまった。
司令室に戻ると局長・倭は、
「ロケットランチャーか。君にしては派手な武器だな」
と、言うにとどまった。
エリコは決意の表情をしながらはっきりと言った。
「……私、これから単独で、虹龍船に乗り込もうと思います」
「……君は何を言っているのだね? 君はここの防御に徹するはずだ。作戦通りしたまえ」
「こうでもしないと、悟空さんは動かないんです! お許しください!」
「あ、待て!」
エリコは司令所から走り去る。衛兵が追い縋ろうとしてきたものの、ついには一機のガンシップを奪って空に逃げることに成功した。間も無く敵が襲来する時に、ここまでくれば諦めてくれるだろう。
「悟空さんがやらないのなら、私がやらなきゃ。助けてもらってばかりじゃダメ」
エリコはそう言い聞かせながら、操縦桿を握っていた。虹龍船から花果山に向かってくる敵にみつからないように、雲の中を迂回しながら進んでいった。
[[次へ->49]]……すでに花果山の方では、戦闘が始まっているだろう。敵味方入り乱れて戦っているに違いない。私の呼んだヒーローたちや、局長は無事だろうか?
一抹の不安はあるものの、エリコは覚悟を決め、眼前の虹龍船の甲板に殴りこむようにガンシップを停めた。
エリコは7世宝剣を構え、ゆっくりとガンシップから降りていく。すでに機体の周りには、敵の神将たちによって取り囲まれていた。
「誰だ? この虹龍船に飛び込むなんていい度胸だな」
神将たちは嘲笑う。それはやはり、何か取り憑かれているような感じがした。
「あんたたちの大将に会わせてほしい。一騎打ちを願いにきたわ」
その求めに応じて、奥から白銀の武者が登場した。
「孫悟空ならまだしも、まさかそなただとはな。その意気やよしだ。受けてやろう。私はいつでも本気だから、手加減はしないがいいか?」
「舐めるんじゃないわよ」
神将たちが眺める中、両者はそれぞれ槍と七星宝剣を構えながら、ジリジリと迫ってくる。先に動いたのは、二郎神君の方だった。
ガッ!
7世宝剣は、槍の初撃を受け止められた。七色の星が、剣戟が交わった時に飛び出す。がさすが、と言っている場合ではない。今度はエリコが腹を狙う。それはいとも簡単に払われる。
ガッ! ガッ! ガッ!
エリコは剣による近接戦闘をも訓練でやっていただけあって、二郎神君とは最初互角にやり合っていた。
しかし、相手は強い。次第にエリコは押されていき、しまいには剣を離してしまった。
「くっ!」
「意外とよく戦ったのは褒めてやろう。だが所詮、お前ら人間の力はその程度のものだ。安心しろ、あとで斉天大聖も冥界に送ってやる」
二郎神君は勢いよく槍を振り下ろす。
もうダメだ。エリコが感じたのもつかの間、ガッ!と鈍い音が聞こえた。
[[次へ->75]]……すでに花果山の方では、戦闘が始まっているだろう。敵味方入り乱れて戦っているに違いない。私の呼んだヒーローたちや、局長は無事だろうか?
一抹の不安はあるものの、エリコは覚悟を決め、眼前の虹龍船の甲板に殴りこむようにガンシップを停めた。
エリコは7世宝剣を構え、ゆっくりとガンシップから降りていく。すでに機体の周りには、敵の神将たちによって取り囲まれていた。
「誰だ? この虹龍船に飛び込むなんていい度胸だな」
神将たちは嘲笑う。それはやはり、何か取り憑かれているような感じがした。
「あんたたちの大将に会わせてほしい。一騎打ちを願いにきたわ」
その求めに応じて、奥から白銀の武者が登場した。
「孫悟空ならまだしも、まさかそなただとはな。その意気やよしだ。受けてやろう。私はいつでも本気だから、手加減はしないがいいか?」
「舐めるんじゃないわよ」
神将たちが眺める中、両者はそれぞれ槍と七星宝剣を構えながら、ジリジリと迫ってくる。先に動いたのは、二郎神君の方だった。
ダダダダダダダダ!
すかさずエリコはマシンガンで二郎神君めがけて撃ちまくった。
しかし彼には効果がなかった。それもそのはず、初めて本部ビルで彼を銃撃した時にも効果がなかったのだから。
「それを今思い出すって、私って馬鹿ね……」
後悔先に立たず。そのまま二郎神君の槍はたちまちエリコの心臓を貫き、エリコは絶命した。
『GAME OVER』
[[最初へ->1]]……すでに花果山の方では、戦闘が始まっているだろう。敵味方入り乱れて戦っているに違いない。私の呼んだヒーローたちや、局長は無事だろうか?
一抹の不安はあるものの、エリコは覚悟を決め、眼前の虹龍船の甲板に殴りこむようにガンシップを停めた。
エリコは7世宝剣を構え、ゆっくりとガンシップから降りていく。すでに機体の周りには、敵の神将たちによって取り囲まれていた。
「誰だ? この虹龍船に飛び込むなんていい度胸だな」
神将たちは嘲笑う。それはやはり、何か取り憑かれているような感じがした。
「あんたたちの大将に会わせてほしい。一騎打ちを願いにきたわ」
その求めに応じて、奥から白銀の武者が登場した。
「孫悟空ならまだしも、まさかそなただとはな。その意気やよしだ。受けてやろう。私はいつでも本気だから、手加減はしないがいいか?」
「舐めるんじゃないわよ」
神将たちが眺める中、両者はそれぞれ槍と七星宝剣を構えながら、ジリジリと迫ってくる。先に動いたのは、二郎神君の方だった。
すかさずエリコは大きいロケットを、二郎神君めがけて放った。
ドガーン!
激しい爆風とともに、二郎神君は毛虫に包まれた。
「やった……?」
煙の中には……仰け反ってはいるものの、平然とした二郎神君が立っていた。
「嘘……」
「終わりだ」
そう言って突撃してきた二郎神君の槍はたちまちエリコの心臓を貫き、エリコは絶命した。
『GAME OVER』
[[最初へ->1]]……すでに花果山の方では、戦闘が始まっているだろう。敵味方入り乱れて戦っているに違いない。私の呼んだヒーローたちや、局長は無事だろうか?
一抹の不安はあるものの、エリコは覚悟を決め、眼前の虹龍船の甲板に殴りこむようにガンシップを停めた。
エリコは7世宝剣を構え、ゆっくりとガンシップから降りていく。すでに機体の周りには、敵の神将たちによって取り囲まれていた。
「誰だ? この虹龍船に飛び込むなんていい度胸だな」
神将たちは嘲笑う。それはやはり、何か取り憑かれているような感じがした。
「あんたたちの大将に会わせてほしい。一騎打ちを願いにきたわ」
その求めに応じて、奥から白銀の武者が登場した。
「孫悟空ならまだしも、まさかそなただとはな。その意気やよしだ。受けてやろう。私はいつでも本気だから、手加減はしないがいいか?」
「舐めるんじゃないわよ」
神将たちが眺める中、両者はそれぞれ槍と七星宝剣を構えながら、ジリジリと迫ってくる。先に動いたのは、二郎神君の方だった。
エリコは日本刀を抜き、二郎神君の槍を受け止めようとした。が、
パリン! と音を立てて、日本刀の刃は脆くも砕け散った。
「しまった!」
天界の神将の持つ武器で、しかもかつて孫悟空を敗北に追いやった武器だ。人間が作った並大抵の武器では敵わなかった。
後悔先に立たず。そのまま二郎神君の槍はたちまちエリコの心臓を貫き、エリコは絶命した。
『GAME OVER』
[[最初へ->1]]エリコは紅瓢箪を取り出すと、力一杯叫んだ。
「醜悪蟲!!」
グガアアアアアア!
しかし、紅瓢箪は吸い込まなかった。おそらく吸い込んで瓢箪の中に収まりきれないほどの大きさになっていたので、吸い込むのを拒否したのだろう。
「失敗だった。仕方がない、どうすればいいか考え直さないと……」
エリコは唇を強く噛み締めた。
[[次へ->83]]「いや、いい考えだ」
悟空はそう言うと、怪獣の腹に如意棒を一発ぶつけた。衝撃で肉体から泥水の水滴が飛び散る。
そしてそれは、容器の中にしっかりと吸い込まれていった。
「攻撃を加え続けて、怪獣の水分を削っていけば、勝機は十分にある」
「なるほど、紅瓢箪と琥珀瓶をフル稼働させて、全部吸い込むわ!」
「全力で攻撃するぞ! 八戒、悟浄も協力してくれ!」
「「任せとけ!」」
それから4人は一心不乱に、怪獣の表面を削り取っては吸い込んでいった……。
そして……ついに全部吸い取ることができた。
すかさずエリコは2枚の『太上老君急急如律令』の札を取り出すと、二つの容器にそれぞれ貼り付けた。これで中に詰まってる怪獣「醜悪蟲」の塊はいずれ溶けて消滅するだろう。
「私たち、勝ったのね」
「お前の機転のおかげだ。エリコ」
2人はすぐ、大声で笑った。
「まさかあの兄貴が、人間をこんなにも信頼するなんてな!」
「1000年以上も経って、ここまで丸くなったとは思わなかったな」
八戒、沙悟浄の言葉に、「別にそんなことはないぞ」と悟空は後ろ頭をかいた。
「さあ、帰りましょうか。一刻も早く、局長に報告しないと」
エリコの言葉を合図に、4人は満を辞して、花果山へと戻っていった。
[[次へ->66]]「くっ! 二対一とは!」
「人のことを言うんじゃんねえよ! あの時と立場が逆になっただけだろうが!」
「まだだ! 周りには私の部下がいる! 者ども、かかれ!」
周りの部下が襲いかかってきた。
「これだけの数、どうする悟空さん?」
「大丈夫だ。お前も西遊記読んでれば分かるだろ?」
悟空はそういうと、自身の毛髪を十数本引き抜いた。その毛髪にフッと息を吹きかけ、叫んだ。
「変われ!」
たちまちその毛髪たちは、それぞれ悟空の分身に早変わりした。孫悟空は毛髪を思い描く物に自在に変えられる力があるのだった。
神将たちは悟空の分身たちに任せ、悟空とエリコは二郎神君相手に専念できた。
ガッ! ガッ! ガッ!
七星宝剣と如意棒の連続攻撃に、二郎神君はさらに追い詰められていった。
「クソっ!こうなったら!」
二郎神君はそう言うと、たちまち自身の周りに黒い風を起こした。その様子を見て、悟空はハッと気づく。
「二郎神君の中には、おそらく醜悪蟲(しゅうあくちゅう)が潜んでいるな。そいつが二郎神君の中を蝕み、正義の神将から邪悪なものへと変化させたんだ。なんとかその蟲を取り除ければいいんだが」
しかしそのような余裕は次第に無くなっていった。今度は二郎神君の第二形態が、圧倒的な力を出してきていたのである
「もうダメかも!」
「さすがに二人でも、分が悪かったか……」
「これで貴様らも、終わりだ!」
二郎神君の叫びで、大風が舞う。次第にそれは大きくなり、たちまち竜巻のようになった。エリコも悟空も、いとも簡単に巻き込まれてしまった。
「あっ……」
その威力は、実際はかなり重い如意棒も、いとも簡単に悟空の手から飛ばされた。
その如意棒が、エリコのもとに迫って来る。
エリコ、どうする!?
[[如意棒を掴んで、悟空に渡す!->74]]
[[危険なので、かわす!->37]]エリコは飛んでくる如意棒をかわす。そりゃそうだ。あれは重さが約8トンもあることを忘れてはならない。素手で掴むには、危険すぎる。
如意棒が何度も迫って来るたびに、エリコはその都度かわすことができた。しかし、このままではラチがあかない。同じく空中に漂う悟空は何度も如意棒を掴もうとしているが、風が強く、なかなかできなかった。
とその時、如意棒は掴まれた。大きい手によって。
[[次へ->19]]エリコの元に如意棒が飛んでくる。
エリコは悟空に受け渡そうと、それをしっかりとキャッチした。
しかしそれは叶わなかった。如意棒は手頃なサイズであったとしても、重さは8トンもある代物だ。エリコは如意棒に激突し、大型車にはねられたような衝撃を体に浴びた。
「エリコ! 大丈夫か! エリコ!」
悟空の声がこだまする中、エリコは静かに目を閉じた。
エリコは閻魔大王の前で、自分の行動をずっと悔やむしかなかった。
『GAME OVER』
[[最初へ->1]]次の瞬間、竜巻が真っ二つに切れた。竜巻は消滅し、エリコと悟空は地上に戻ることができた。二人が起き上がった視線の先に、二つの影がいた。
「兄貴、久しぶりだな。どうして俺を呼んでくれなかったんだよ」
「八戒……」
右手に九本の歯の武器。左手には如意棒。さっきの大きな手は猪豚の顔のものだった。
ということは、横にいるのは……
「悟空兄者。助けに参ったぞ」
「悟浄……」
伝説通り河童、とは言い難いが、水色の人型の妖怪。その武器の「降妖宝杖(こうようほうじょう)」は、噂通りのサスマタ型であった。
「まさか、貴様らは……」
「いかにも。俺が天蓬元帥猪八戒だ!」
「捲簾大将沙悟浄、見参。兄弟子の斉天大聖を救いにきた」
「お前ら」
「一気に追い込むわよ!」
二郎神君はそのまま動かなくなった。
「くっ、おのれ……。弼馬温。せめてお前だけでも道連れにしてやる!」
と、二郎神君は起き上がったかと思うと、悟空に向け突貫していった。最後の捨て身の攻撃と言うやつだ。
「危ない!」
悟空を救わないと! エリコは短時間で、行動を起こさなければならなかった。
[[次へ->6]]
† Column †
弼馬温
悟空の天界でもらった最初の官職。文字どおり馬屋の長官。しかし位が無きに等しいくらい低いものだと知った悟空は無断で下界に帰った。ここから悟空と天界との確執が始まっていった。
今でも悟空にとっては最大の侮辱であるので、悟空をバカにしたい場合は使ってみよう。(もちろんその後は自己責任でね)
猪八戒
悟空の弟弟子。元々は天蓬元帥(てんぽうげんすい)と呼ばれる天界の水軍を率いる神将だったが、蟠桃勝会で不祥事を起こして地上に追放になった。地上で豚の姿で生まれる。そこで三蔵と悟空に出会い、旅仲間に加わる。無事に旅を終え、仏になったはずだった。
沙悟浄
悟空、八戒の弟弟子。元々は捲簾大将(けんれんたいしょう)と呼ばれる天界の軍を率いる神将だったが、蟠桃勝会で不祥事を起こして地上に追放になった。地上で流沙河に住み着き人を食っていたところに三蔵一行に改心さえられ、一緒に旅に出る。それから無事に旅を終え、仏になったはずだった。今にも孫悟空が襲われようとしている。
その時、エリコは瞬時に何の道具を使って孫悟空を救うかを決めなければならなかった。
エリコの判断は?5秒以内に決めよう
[[紅瓢箪->57]]
[[琥珀瓶->9]]
[[幌金縄->20]]
[[七星宝剣->77]]
[[芭蕉扇->70]]
[[拳銃->35]]
[[決められない!->29]]
† Column †
・紅瓢箪
呼びかけた相手を吸い寄せ、中に閉じ込めてしまう仏法。どんなものでも吸い込める。『太上老君急急如律令』の札を貼れば、中に毒液を出し、中に入ってきたものを溶かす。かつての戦いで、一度は悟空も吸い込まれたことがあるが、最終的に銀角を閉じ込めた。
・琥珀瓶
効果は紅瓢箪と同じ。最終的に金角を閉じ込めた。
・幌金縄
呪文を唱えれば、対象物に巻きつき、拘束することができる。
・七星宝剣
銀色の剣。刃がぶつかるたびに、七色の星を出すことが特徴。重い如意棒を受け止めても刃こぼれひとつしない神剣。かつて金角と銀角はこれで悟空と互角の剣勝負を繰り広げた。
・芭蕉扇
一振りで一面を火の海にできる大団扇。ちなみに牛魔王が使っていた芭蕉扇は一面を氷一色にできるので、逆の効果だ。
・拳銃
エリコのもつJPSS公認の拳銃。装弾数10発。「そらっ!」
エリコは咄嗟に金の縄を投げつける。
「何だ!?」
一瞬二郎神君を混乱させることはできたものの、縄はそう簡単に巻きつかなかった。
「邪魔が少し入ったが、今度こそ死ね!」
二郎神君は再び悟空に対して最後の突撃をした。
「それはどうかな」
悟空はそう言うと、両手で印を結んだ。そして、呪文を唱える。
その呪文を聞いた縄は、息を吹き返したかのようにたちまち二郎神君に絡みついた。
「な、何だこの縄は!」
ついに二郎神君は縛り上げられ、拘束されたのであった。
「ふう、太上老君(ジジイ)から聞いた緊縛呪文を覚えておいてよかったぜ」
辺りを見渡すと、すでに部下は全て悟空の分身たちに倒されていた。
「戻れ!」の悟空の掛け声で、悟空の分身は元の金毛に戻ると、自然と悟空の頭に戻っていった。
と、ここで二郎神君の口から一匹の蟲が飛び出した。蟲を吐き出した途端、二郎神君は失神した。
「うわっ!」
泥水のような液体に、六本足が生えた蟲は、木の甲板を縦横無尽に走り回る。エリコは思わず飛び退いた。
倒れている他の神将たちの口からも、同様の蟲が続々と湧いて出てきた。その蟲達はやがて一つにまとまっていった。
[[次へ->68]]エリコは七星宝剣を抜き、二郎神君に突撃した。
エリコの七星宝剣は、二郎神君の胸を貫いた。
やった! 何事もなければエリコはそう声に出していただろうが、今回はできなかった。
エリコは自身の胸元を見る。そこには二郎神君の槍が突き刺さっていた。
相打ちとなったエリコと二郎神君は、同じようにして倒れた。
「エリコ、おい大丈夫か! エリコ!」
悟空がエリコに駆け寄る。
これで世界は救われた。声すら出せないエリコは、そのセリフを口だけで作ると静かに息を引き取った。
[[次へ->82]]エリコが芭蕉扇を振るうと、炎が二郎神君を包み込んだ。
「ぐっ!」
二郎神君はひるんだものの、火傷を負わせることさえ叶わなかった。
もう一撃をお見舞いしようと、再び悟空の元に突っ込んでいった。
エリコはもう一度、二郎神君をどう止めるかを考える必要に迫られた。
[[もう一度考える!->6]]エリコは自身の拳銃を取り出し、二郎神君に向けて発砲した。
パン! パン!
しかし、二郎神君には効果はなく、虚しい音だけが響いた。
そうだ、最初に二郎神君とJPSSビルで対峙したときも、効かなかったっけ。
気がついた悟空は、如意棒を二郎神君の頭に振り下ろす。それは二郎神君の脳天にめり込んだ。
しかし遅かった。悟空の胸を、槍が貫いた。
相打ちになった二人は、その場に倒れた。
「悟空さあああああああん!!」
「兄貴いいいいいいいいい!!」
「兄者あああああああああ!!」
エリコ、八戒、悟浄のその叫び声も虚しく響き渡った。
[[次へ->64]]とっさのことに、エリコは自身の判断が間に合わなかった。
気がついた悟空は、如意棒を二郎神君の頭に振り下ろす。それは二郎神君の脳天にめり込んだ。
しかし遅かった。悟空の胸を、槍が貫いた。
相打ちになった二人は、その場に倒れた。
「悟空さあああああああん!!」
「兄貴いいいいいいいいい!!」
「兄者あああああああああ!!」
エリコ、八戒、悟浄のその叫び声が虚しく響き渡った。
[[次へ->64]]「二郎神君!」
エリコはそう叫ぶと、琥珀瓶を掲げた。
「なに!?」
二郎神君がそう反応するやいなや、二郎神君は琥珀瓶に吸い込まれていった。
エリコはすかさず『太上老君急急如律令』の札を取り出し、琥珀瓶に貼り付けた。これで二郎神君は中で溶けて無くなるだろう。
「……終わったか」
「ええ」
「おそらく二郎神君は操られていただけだ。しかし、世界を救うにはこうするしかなかったのか……」
二郎神君を殺してしまったことで、勝利にも関わらず四人は喜ぶことができなかった。
[[次へ->54]]「二郎神君!」
エリコはそう叫ぶと、紅瓢箪を掲げた。
「なに!?」
二郎神君がそう反応するやいなや、二郎神君は紅瓢箪に吸い込まれていった。
エリコはすかさず『太上老君急急如律令』の札を取り出し、紅瓢箪に貼り付けた。これで二郎神君は中で溶けて無くなるだろう。
「……終わったか」
「ええ」
「おそらく二郎神君は操られていただけだ。しかし、世界を救うにはこうするしかなかったのか……」
二郎神君を殺してしまったことで、勝利にも関わらず四人は喜ぶことができなかった。
[[次へ->54]]二郎神君が死に、世界は救われた。
エリコは自身の葬儀の様子を、幽冥界で見ていた。
「見終わったかな? 後悔はしておるか?」
閻魔大王が訪ねてきた。
「後悔はないです。むしろここまで悼まれるなんて、人として嬉しい限りだと思いました」
「そなたは世界の歴史に刻まれるだろう。たとえ、それが一部の地上の者にしか知られないことであったとしても」
『GOOD END 世界救済で殉職』
[[最初へ->1]]二郎神君が死に、世界は救われた。
しかし、孫悟空という伝説も、同時にこの世から消えた。
孫悟空の葬儀は、盛大に執り行われた。
あそこでもっとましな判断ができたはず……
エリコは取り返しのつかない後悔とともに、JPSSを去った。それからは一般人として、余生を過ごしたという。
『GOOD END 巨星墜つ』
[[最初へ->1]]二郎神君の葬儀は、しっかりと執り行なわれた。
結局、エリコは自身にこれでよかった、と信じ込ませるしかなかった。
悟空とエリコは過去に捕らわれず、新しい日常に向けて再スタートを切る決意をした。
『GOOD END 悲劇の神将』
[[最初へ->1]]やがてその蟲達は一気に膨張していった。
「このままじゃまずい!」
「逃げるぞ!」
悟空、八戒、悟浄はそれぞれの雲を起こし、虹龍船から脱出した。エリコもガンシップに飛び乗り、甲板を離れる。
バキバキバキ!
もはや巨大な醜悪蟲の重みを支えきれず、虹龍船は真っ二つに割れて破壊された。
いつの間にか、蟲は点まで貫く巨大な泥水の怪獣になっていた。
『エージェントエリコ、聞こえるか? 無事なんだな?』
機内の通信機からは、局長・倭の声が。
「はい、といっても、状況は芳しくないですが……」
『そのようだな。怪獣はこちらからも見える。いきなり敵の神将たちがバタバタ倒れて、口から泥のような蟲を吐き出す有様でね。その蟲たちが君たちのいる怪獣に飛んで行ってるようだ……」
と、その時、
グアアアアアア!
怪獣は雄叫びをあげたと思うと、思い切り腕を振り回した。巨大な腕にはずみで当たったガンシップは、警告音を立てて墜落していった。
エリコはハッチを開け、空中に向け脱出する。そのエリコを筋斗雲の孫悟空がかっさらうように救い出した。
「大丈夫か」
「全く、最後まで助けてもらってばかりね」
直後、またしても巨大な腕が悟空達に迫り来る。悟空は間一髪でひらりとかわした。
「このままじゃまずい。エリコ、何かいい考えはあるか」
「私に聞かないでよ!」
「ここまでのお前の判断を信頼して聞いたんだ! 何とか考え出してくれ!」
[[次へ->78]]エリコは琥珀瓶を取り出すと、力一杯叫んだ。
「醜悪蟲!!」
グガアアアアアア!
しかし、琥珀瓶は吸い込まなかった。おそらく吸い込んで瓶の中に収まりきれないほどの大きさになっていたので、吸い込むのを拒否したのだろう。
「失敗だった。仕方がない、どうすればいいか考え直さないと……」
エリコは唇を強く噛み締めた。
[[次へ->83]]「一体どうすれば……」
孫悟空の肩にしがみつきながら、エリコは懸命に思考を巡らす。
目の前の泥水怪獣に対し、一体何を使えばいいだろうか?
[[七星宝剣->84]]
[[琥珀瓶->67]]
[[紅瓢箪->87]]
[[芭蕉扇->58]]
[[幌金縄->16]]
[[拳銃->92]]
[[決められない!->60]]
† Column †
・紅瓢箪
呼びかけた相手を吸い寄せ、中に閉じ込めてしまう仏法。どんなものでも吸い込める。『太上老君急急如律令』の札を貼れば、中に毒液を出し、中に入ってきたものを溶かす。かつての戦いで、一度は悟空も吸い込まれたことがあるが、最終的に銀角を閉じ込めた。
・琥珀瓶
効果は紅瓢箪と同じ。最終的に金角を閉じ込めた。
・幌金縄
呪文を唱えれば、対象物に巻きつき、拘束することができる。
・七星宝剣
銀色の剣。刃がぶつかるたびに、七色の星を出すことが特徴。重い如意棒を受け止めても刃こぼれひとつしない神剣。かつて金角と銀角はこれで悟空と互角の剣勝負を繰り広げた。
・芭蕉扇
一振りで一面を火の海にできる大団扇。ちなみに牛魔王が使っていた芭蕉扇は一面を氷一色にできるので、逆の効果だ。
・拳銃
エリコのもつJPSS公認の拳銃。装弾数10発。エリコは七星宝剣を抜くと、泥水の怪獣に切りかかった。
しかし、巨大な体から少量の水滴が飛び散っただけであった。
「だめか……何か別の手は」
エリコはすぐさま考え直すことになった。
[[もう一度考える!->78]]エリコは幌金縄を取りだすと、泥水の怪獣に向かって投げた。
「悟空さん、呪文お願い!」
「わかった!」
悟空が呪文と唱えると、たちまち怪獣の右腕に巻きつき、きつくなったことで右腕を切り落とすことに成功した。落ちた腕はすぐさま形を失って泥水に戻り、海に落ちていった。
「やった! 後はこれを繰り返せば……」
そう安堵した矢先であった。腕の切れ目から新しい腕が生えた。この怪獣はすぐに部位が復活するようだ。
「だめか……何か別の手は」
エリコはすぐさま考え直すことになった。
[[もう一度考える!->78]]エリコは自身の拳銃を取り出すと、泥水の怪獣に向け発砲した。
パン! パン!
しかし、撃ったところから、巨大な体の微量の水滴が飛び散っただけであった。
「だめか……何か別の手は」
エリコはすぐさま考え直すことになった。
[[もう一度考える!->78]]エリコはついに、対処方法を決めることができなかった。
醜悪蟲の怪物がついに限界の大きさになる。
怪物は爆発し、泥水があふれ出た。
「きゃあああああああ」
エリコと悟空はその大水に飲み込まれてしまった。
こうして地球はついに泥水の洪水に飲み込まれ、滅亡した。
『END 泥水の大洪水』エリコは芭蕉扇を一振りした。
「えいや!」
その振りに応じて、火が立ち上る。
その火はたちまち燃え広がり、いとも簡単に怪獣を焼き尽くしてしまった。
「やったな」
孫悟空が微笑む。
「うん。少しあっけない感じだったけど。よかったわ」
エリコはそういうと、2人は大声で笑った。
「兄貴、早速帰ろうぜ」
八戒が急かしてきた。4人はそれに合わせ、花果山へと進路を変えた。
[[次へ->66]]「え……?」
エリコが目を開くと、そこには孫悟空がいた。振り起こされた槍を、両手でしっかりともった如意棒で受け止めている。
「二郎神君、あとでと言わずに、今ここでケリをつけようか。まあ、次に勝つのは俺の方だが」
悟空は如意棒を押し返す。二郎神君は大きく後ろにのけぞった。
「ふっ、また勝負を挑むのか。お前は私に勝てないということはわかっていることだ。1回目の時からな」
二郎神君は槍を構え直す。しかし悟空はため息をついた。
「……お前、忘れたのか。かつてのお前の勝利は、お前だけのものじゃなかっただろ」
「なんだと?」
「確かにお前と俺はタイマン張った。しかし、戦いの方はお互い互角だったろ? お前が勝てたのは、少なくともかつて俺に負けた神将たちのサポートがあったからこそだ。太上老君とか四天王とか玉帝とかな。彼らの妨害工作もあって俺は負けたんだ。いわゆる天界全体の勝利だ。お前一人で勝ったと、思い上がってんじゃねえよ」
「悟空さん……やっぱ来てくれてよかった」
「勘違いすんな。俺は単純に果し合いをするだけだ。一人では負けるかも知れんが、エリコ、お前と一緒ならあるいはな。エリコ、力を貸してくれ」
「私の刀さばき、あの斉天大聖から高評価もらったのは、この上ないわね!」
[[次へ->90]]ついに、おぼろげながらも花果山が目視できる距離まできた時、彼女の携帯通信機がうなった。
『ご苦労だったな。エージェントエリコ。まさかあの怪獣をやっつけるとは。命令違反も帳消しにできるくらいの功績だ』
「任務完了しました、局長。あと私一人の力ではなく、孫悟空さん、猪八戒さん、沙悟浄さんの力が大きいと思います」
「おいおい、謙遜は良くないぜ、姉ちゃん」
「そうだ。そなたの判断がなければ、この勝利はあり得なかった」
八戒と悟浄が茶々を入れてきた。しかしそれを遮るように悟空が、
「エリコ、その如意仏法はお前が持つべきだ」
「え!? これは太上老君さんのものじゃ?」
「ジジイには俺から話をつける。なに、俺が説得すれば許すはずさ。もちろん、昔の俺のような脅迫をしなくてもな」
エリコは、手元の小袋をずっと見つめた。しばらくすると、倭が、
『とにかく、花果山にすぐ戻ってきたまえ。4人のヒーローの帰りを待っているぞ」
と、帰りを促した。
※ここで、花果山にエリコが呼び寄せたヒーローの数によって、分岐が変わります。
ヒーローの数が、
[[7人全員いる->26]]
[[5〜6人いる->15]]
[[1〜4人いる->31]]花果山はところどころ煙が出ているが、大きな損傷はなかった。おそらく十分にヒーローが島を守りきったおかげであろう。
エージェント達と、猿達の喝采の中、四人は水廉洞前に降り立った。正面には長老猿と同じ位置に局長倭はいた。
「みんな、無事で何よりです」
安堵するエリコに、ヒーローそれぞれが声をかけてきた。
任務を終えた花果山は再び着水した。またこの世界に危機が迫った時に、再び動き出すだろう。
「よくやった、エージェント。毘沙門の加護のおかげだ」
と、キャプテンジャパン。
「見直したぜ。現代でもこんな逸材が現れるたぁ思わなかった」
と、開陽丸。
「オ疲レ様デシタ。マタ私ガ必要ニナッタラ呼ンデ下サイ」
と、タメドロイド。
「あんたやるわね。でもそれで局長に色目使ったら許さないんだからん」
と、ハル。
「祝着至極。忍者衆に入りたいならいつでも歓迎するぞ」
と、ナツ。
「今度また、お茶菓子でも一緒にしようか」
と、アキ。
「完璧」
と、フユ。
そして、
「よくやった。JPSSは君達のことを永遠に忘れないだろう。特にエリコ、お前は私たちの誇りだ」
最後の倭の一声で、エリコは今日一番の大きな喝采を浴びた。
封印を解かれた悟空は、JPSSの正式なヒーローとして活躍していくことに決めた。もちろん八戒と悟浄も、新しくJPSSに加わることも決まった。
「ありがとう悟空さん。ところで、これからどこ行くの?」
「俺の師匠のもとへ修行に出かける。今回は勝てたとはいえ、次に来るのは強敵かもしれんしな」
「俺も兄貴と一緒にいくことにした。お師匠様、玄奘三蔵はもういないけど、また俺たちが活躍できるように、兄貴の足手まといにならないようにな。」
「俺もだ。エリコ殿、あとは任せたぞ。」
そう言うと悟空、八戒、悟浄はそれぞれの雲で、空高く飛び去っていった。
「また、一緒に戦えることを!」
エリコはその姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けていた。
[[次へ->100]]
† Column †
須菩提祖師(しゅぼだいそし)
まだ生まれたての美猴王に仙術などを教えた仙人。そして美猴王に「孫悟空」と名付けた張本人でもある。悟空は2年で不祥事を起こして去ってしまうが、悟空は彼との約束により、終始その名を口にし広めようとしなかったことからも、悟空が信頼している数少ない人物であろう。花果山に戻った時、その悲惨な現状には目を見開いた。浮遊した花果山はところどころヒビが割れ、今にも崩落しようとしている。激しい戦闘が繰り広げられた結果であろう。
「まずい、局長たちを助けないと!」
「わかってる。しかし、俺の筋斗雲には、これ以上人は載せられない」
一体どうすれば。そう悩んでいると、花果山の方から数機のガンシップが飛び立つのが見えた。
通信機に、局長・倭の声が届いた。
『こっちは無事だ。全てのヒーロー、エージェント、水廉洞の猿達を載せて脱出できた。しかし残念ながら、花果山は救うことができなかった。もっとヒーローの人手があれば、こうはならなかったかもしれない。許してくれ、斉天大聖』
悟空は目の前の故郷が崩れていく様を、ため息をつきながら見ていた。
「……天界とお前達が無事なら構わないさ。猿達のためにも、また新しい拠点を見つけないとな」
島から次々と岩が海中に落下していく。エリコは唇を大きく噛み締めた。
[[次へ->69]]誘いの手紙を送った数日後、予定通り天界で蟠桃勝会が開催されることになった。
天界にいき、会場に着いた。と、会場の目の前で、見慣れた顔の3人が立っていた。
「歴史的瞬間ね」
「お前が来るのなら来たさ。なあ」
悟空はいった。どうやら3人とも参加を無事に認められたらしい。4人は揃って、会場の中に入っていった。
中ではかつての3人の所業が打ち消されたかのように、大きな賞賛が待っていた。
中央に皇帝のような、威厳のある人物がいた。おそらく彼が玉帝だろう。
「久しぶりだな、玉帝」
「「玉帝陛下、お久しゅうございます」」
物怖じしない悟空とは対照的に、八戒と悟浄は畏まった。釣られてエリコもその後に続いた。
「お前たちには感謝しておるぞ。主役は揃った。お前たちに会いたがっている人物がおるのでな」
玉帝が指し示した先には、高尚な僧侶がいた。
「悟空、八戒、悟浄。お久しぶりですね。1200年経った今でも、またしてもあなた方に助けられるとは」
3人はかつて旅を共にした師との久しぶりの再会に、歓喜の表情を浮かべた。
『EXTRA END 蟠桃勝会での再会』
[[タイトルへ戻る->はじめに]]
† Column †
玄奘三蔵
三蔵法師とも。唐の高僧。両親がなくなったため寺で育ち、皇帝から経典の収集を依頼され旅に出る。ちなみに彼の前世は釈迦の二番弟子であり、仏法を軽んじたために地上に落とされ人間に生まれ変わった。そのためか旅の最中にも受難を受ける羽目になる。悟空・八戒・悟浄の力を借りて無事に天竺にたどり着き、仏となった。亡くなって以降、仏として天界で長らく過ごしている。イースターエッグ 蟠桃勝会
数日後、エリコを始め天界を救ったヒーローたちに、玉帝からの手紙が届いた。
それによると、二郎神君は操られていたとはいえ、謹慎の処分を受けているらしい。玉帝などの主要人物は別の場所に監禁されていたが、無事に救出された。他にも四天王などの神将も同じくであった。そして、天界の勝利と復興を祝って、蟠桃勝会が行われる、ということだった。
エリコは悟空たちにも誘いの手紙が来てるかわからなかった。果たしてエリコは悟空、八戒、悟浄を誘うべきだろうか?
[[誘う->85]]
[[誘わない->7]]
† Column †
蟠桃勝会
天帝と帝母が主催の、天界での宴。不老不死になる「蟠桃」と呼ばれる桃を始めとしたものが並べられる優雅な会合。
しかし、悟空、八戒、悟浄にとっては因縁の会合である。悟空はここで使う桃を全て食べてしまって宴を台無しにしてしまって天界との戦いに繋がり、八戒はここで天女を淫らに追い回し地上に追放。悟浄に至ってはここで高い皿を一枚割ってしまっただけで地上に追放の憂き目を見た。3人はその贖罪で、玄奘三蔵との旅をすることになる。エリコはついに、手紙を出さなかった。
結局宴は開催され、滞りなく終わったものの、悟空たちは姿を現すことはなかった。
「まあ、簡単に許されるはずがないか」
エリコはため息をつきながらも、蟠桃を頬張っていると、1人の高尚な僧侶が話しかけてきた。
「エリコ殿でございますでしょうか……」
「ああ、はい。あなたも二郎神君に捕らわれていたお一人でしょうか?」
「ええ。その節はありがとうございました。それと……」
その僧侶は続けた。
「あなたのお仲間の孫悟空、猪八戒、沙悟浄によろしくお伝えください。かつて旅をした仲として、誇りに感じている、と」
そう言うと、僧侶はどこかに去って行った。
「まさかあの人って……」
エリコはその後ろ姿を、ずっと見守っていた。帰ったらこのことを絶対伝えなきゃ、と思いながら。
『EXTRA END 蟠桃勝会』
[[タイトルへ戻る->はじめに]]
† Column †
玄奘三蔵
三蔵法師とも。唐の高僧。両親がなくなったため寺で育ち、皇帝から経典の収集を依頼され旅に出る。ちなみに彼の前世は釈迦の二番弟子であり、仏法を軽んじたために地上に落とされ人間に生まれ変わった。そのためか旅の最中にも受難を受ける羽目になる。悟空・八戒・悟浄の力を借りて無事に天竺にたどり着き、仏となった。亡くなって以降、仏として天界で長らく過ごしている。花果山があった場所から真北に行くと、坎源山(こんげんさん)という同じような火山島がある。
そこには1700年前に孫悟空が初めて倒した妖怪、かつての混世魔王(こんせいまおう)の根城があった。案の定、その「水臓洞」は空っぽで、猿達の移住先にはもってこいであった。
猿達の新しい生活が無事に始まったにも関わらず、エリコは故郷を守れなかった自責の念を抱いていた。
こうしてエリコは、JPSSから去る決意を示したのであった。復旧作業が活発になるJPSS本部で、局長・倭はその旨を了承した。
「本当にいいんだな」
「はい。もっと自分に力をつけなければと思います。そのために傭兵となって修行して行こうかと」
「わかった。気のすむまでやるといい。また呼び出すその日を楽しみにしているよ」
ビルを出ると、そこには猪八戒、沙悟浄を従えた孫悟空がいた。
「残念だな。俺はこれからだと思っていたんだが」
「ごめん。でも、私はもっと強くなるしかない。これ、太上老君さんに返しといて」
エリコは如意仏宝の小袋を悟空に手渡すと、そのまま去っていった。その後ろ姿を、3人はずっと見守っていた。
それからエリコの姿を見たものはいない。噂によれば、アフリカの内戦地域で平和のために孤軍奮闘しているとか。
『HAPPY END 放浪』
[[最初へ->1]]「エージェント、躑躅森エリコ。前へ」
ここは日本武道館。吹奏楽のファンファーレがなる中、一人のヒーローが叙任式のステージに威風堂々と上がっていく。
ステージから見渡すかぎり、JPSSの文武百官。数千の大衆の注目の中、エリコは局長・倭の前に姿勢を正した。
「貴官をJPSSの新しいヒーローに任命する。ヒーロー名は、『サクラ・ソルジャー』である」
桜の紋章が描かれた新しい戦闘スーツの胸に、勲章が飾られた。如意仏法を駆使することが特徴のサクラ・ソルジャーはヒーローにふさわしい、拍手喝采の渦に包まれる。
ここで局長・倭は耳打ちをしてきた。
「これが終わったらすぐ任務だ。大阪で早速ヴィランが大暴れしているらしい」
「期待に応えてみせます」
エリコは分かっていた。これで終わりじゃない。私の本当の戦いは、これからだと。
『TRUE END 新ヒーロー誕生』
[[タイトルへ戻る->はじめに]]
[[おまけイースターエッグ 蟠桃勝会(ばんとうしょうえ)->65]]4人が花果山に降り立った時、そこには数多くの死体が転がっていた。神将、エージェント、猿、それぞれのだ。
「間に合わなかった……?」
エリコは水廉洞に駆け込む。そこには満身創痍で倒れていた局長・倭の姿があった。
「局長!」
駆け寄ると、倭は血に染まった顔で、笑みを無理やり作った。さっきの通信も、どうやら最後の力を振り絞って出したものらしい。
「エージェント、お前に頼みがある」
「何でしょう?」
「君が生き残った限り、JPSSは続く。君がJPSSのリーダーとなり、日本を、頼む」
事切れた倭の前に、エリコは呆然とするしかなかった。
戦闘によるダメージで花果山は崩壊を始めた。悟空はうつむいたままのエリコを連れて、筋斗雲で島から脱出した。
花果山が崩れていく音を聞きながら、エリコは涙を流していた。
[[次へ->52]]世界は守られたものの、その代償はあまりに大きかった。
エリコは悟空たちと別れ、傭兵となる道を選んだ。
「JPSSを再び創り上げる為に、まず自分が強くならないと」
アメリカ軍のエリート兵になったエリコは、今日もシリアで敵を倒し続ける日々を送っている。
『HAPPY END 辛勝と闇落ち』
[[最初へ->1]]「しまった!」
エリコは異変を感じ取ったものの、すでに遅かった。ネットで宙吊りにされる罠が発動し、まさに一網打尽が如く一行を捕らえてしまったのである。
一行があたふたしているところへ、
「久しぶりに侵入者が現れるとは、驚きだな」
慌てふためく一行の前に現れたのは、ボロボロの軍服を着た中年の男性だった。
「その声は、開陽丸か? 私だ。倭だ。助けてはもらえないか?」
これが開陽丸の日常的な姿なのか。
「倭だと? 二度と俺の目の前に現れるなと言っただろう」
やはり、彼は気の難しい人物であるようだった。
「そこをなんとか頼む。世界が危機に瀕しているんだ!」
「俺の知ったことじゃねえよ」
こうして開陽丸は、網に絡まったままの一行を、見た目によらない怪力で引きずっていった。
こうして隠れ家の地下深くの牢獄に一行は閉じ込められた。開陽丸とは、それっきりだった。
こうして7日目が経過し、開陽丸が一行の言っていることが本当であることを知った時には、もう遅かった。
『END 狼に監禁』
[[最初へ->1]]「危ない!」
とっさにハルがエリコの前に立ちふさがる。
「どうしたの?」
「ここに罠があるわよん! どうやら人為的に仕掛けられた」
地面をよくよく見てみると、確かにネット型の罠はあった。おそらくこれを踏んだ時、上に持ち上がるタイプのものだろう。
「俺が用意した罠を軽々避けるとはな」
身構える一行の前に現れたのは、ボロボロの軍服を着た中年の男性だった。これが開陽丸の日常的な姿なのか。
「お前もしかして倭だな? 二度と俺の目の前に現れるなと言っただろう」
やはり、彼は気の難しい人物であるようだった。
「開陽丸、お前に機関に戻って来てほしい。世界が危機に瀕しているんだ!」
「俺の知ったことじゃねえよ」
とここで、ハルが素早く開陽丸の後ろに回り込んだ。春はその喉元にクナイを突き出すと、
「嫌なら力ずくででも。罠にかからなかった以上、こちらはいつでもあなたを捕獲できるわよん」
「くっ……」
開陽丸は観念したのか、
「わかった。それくらいの覚悟があるとは思わなかった。来い。俺の隠れ家に案内してやる」
と、ジャングルの奥地へと案内していった。
[[次へ->71]]「それには及びません局長。拙者の『火遁の術』でたちまち解凍してみせましょうぞ」
ナツは印を結ぶと、その手から凄まじい炎を出した。
その高温の炎のおかげで、1日でキャプテン・ジャパンの解凍が完了した。
「……ここは」
キャプテン・ジャパンが目を覚ます。
「目が覚めたか。ここは冷凍から70年後の世界だ。君の力が必要だ、キャプテン」
倭の頼みに、キャプテンは、
「自分が解凍されたからには、この日本に危機が迫っているんでござろう。承知したでござる」
と、快諾した。彼は側にあった自身の日本刀を下げ、鋼鉄でできた日の丸の陣笠を被った。
※キャプテン・ジャパンがヒーローに加わった。
※ガンシップで移動→2日経過。『???』で移動→1日経過。
※この時点でまだ7日が経過していない場合、戻って別のヒーローの元へ向かうことができます。
7日が経過した場合、時間切れとなり、決戦へ進みます。
[[まだ時間はある!->55]]
[[7日目が過ぎた……->30]]「……」
局長はしばらく装置と悪戦苦闘していたが、ついに諦めを見せた。
「だめだ、長年作動させていないせいで、機械が壊れている。大規模な修理が必要だ」
結局、修理に1日をかけた結果、ようやく解凍装置は作動した。そこから2日かけて、ようやくキャプテン・ジャパンの解凍が完了した。
「……ここは」
キャプテン・ジャパンが目を覚ます。
「目が覚めたか。ここは冷凍から70年後の世界だ。君の力が必要だ、キャプテン」
倭の頼みに、キャプテンは、
「自分が解凍されたからには、この日本に危機が迫っているんでござろう。承知したでござる」
と、快諾した。彼は側にあった自身の日本刀を下げ、鋼鉄でできた日の丸の陣笠を被った。
※キャプテン・ジャパンがヒーローに加わった。
※ガンシップで移動→3日経過。『???』で移動→4日経過。
※この時点でまだ7日が経過していない場合、戻って別のヒーローの元へ向かうことができます。
7日が経過した場合、時間切れとなり、決戦へ進みます。
[[まだ時間はある!->55]]
[[7日目が過ぎた……->30]]「そうだ思い出した。確かフユに鍵を渡したんだったな」
局長の言葉に合わせて、フユは無言で鍵を差し出す。その鍵を差し込むと、ウイーンという音をたてて機械武者は起動した。
「起動ぷろぐらむ完了。イツデモゴ命令ヲ」
その声はまさしく機械そのものであった。エリコはその滑らかな動きに驚きながらも、彼に言った。
「今世界が危険なの。力を貸して」
「命令ヲ受託シマシタ」
彼は背中の弓を取り出すと、近くにあった壊れた時計のど真ん中を矢で射抜いてみせた。その精密さに、エリコは安心を覚えたのだった。
※タメドロイドが加わった。
※ガンシップで移動→2日経過。『???』で移動→1日経過。
※この時点でまだ7日が経過していない場合、戻って別のヒーローの元へ向かうことができます。
7日が経過した場合、時間切れとなり、決戦へ進みます。
[[まだ時間はある!->55]]
[[7日目が過ぎた……->30]]「忍者衆の誰かに渡したところまでは覚えているんだが、はてさて誰に鍵を渡したっけ?」
「こんな時に……」
局長の年相応の物忘れがここで発動してしまったようだ。エリコは花果山にある臨時本部にも問い合わせてみたが、予備の鍵などは一切ないとのこと。
「そんな。ここまで来て置いて起動できないなんて」
「自分の責任だが、今回は引き上げよう。すまなかったな」
こうして未練を残したまま、二人は八丈島から去ることにした。
※ヒーローを獲得することができませんでした。『タメドロイドの鍵』を入手してからもう一度来ることができます。日数は経過します。
※ガンシップで移動→2日経過。『???』で移動→1日経過。
※この時点でまだ7日が経過していない場合、戻って別のヒーローの元へ向かうことができます。
7日が経過した場合、時間切れとなり、決戦へ進みます。
[[まだ時間はある!->55]]
[[7日目が過ぎた……->30]]「要するに月光を出せればいいんだろう? なら私の出番だな」
忍者アキは印を結部と、そこから光線が飛び出した。それを開陽丸に向けて浴びせる。
「これはすげえな。この人の感情が入った温かな光ならリハビリなく今からでも出撃できる。本番はこの力、遺憾無く発揮できるだろう」
こうしてエリコ一行は新しいヒーローを連れ、花果山に戻ることになった。
※戦狼・開陽丸が加わった。
※ガンシップで移動→2日経過。『???』で移動→1日経過。
※この時点でまだ7日が経過していない場合、戻って別のヒーローの元へ向かうことができます。
7日が経過した場合、時間切れとなり、決戦へ進みます。
[[まだ時間はある!->55]]
[[7日目が過ぎた……->30]]4日までの間、エリコの一行は開陽丸の体慣らしに付き合わされた。筋トレの手伝いや家事などである。こうすることで、久しぶりの肉体変化にも耐えられるようなリハビリとなった。
結局、4日後の満月までエリコたちは待たされることになった。月光の光を浴びて、開陽丸は覚醒できた。
「これで十分だ。本番はこの力、遺憾無く発揮できるだろう」
こうしてエリコ一行は新しいヒーローを連れ、花果山に戻ることになった。
※戦狼・開陽丸が加わった。
※ガンシップで移動→5日経過。『???』で移動→4日経過。
※この時点でまだ7日が経過していない場合、戻って別のヒーローの元へ向かうことができます。
7日が経過した場合、時間切れとなり、決戦へ進みます。
[[まだ時間はある!->55]]
[[7日目が過ぎた……->30]]ジャングル奥地の隠れ家は洞穴を改造したものだった。
中に入り、早速開陽丸を説得しようと試みた。しかしなかなか首を縦に振らなかった。
「日中戦争で駆り出された俺は、すっかり戦争から身を引くことにした。戦いは何も生み出さない。俺たち人間兵器はなおさらだ」
ここでエリコは、必死に訴える。
「国家同士のその戦いに意義はないかもしれない。しかし今回は世界の破壊を目論む強大な悪との戦いよ。この有意義な戦いにはあなたの力が必要なのよ」
エリコの情熱が伝わったのか、ついに
「わかった。それなら受けてやろう。ここの生活にも少し飽き飽きしてきたところだからな」
と開陽丸は立ち上がった。
「だが、久しぶりに出撃するとなると、満月の光を浴び直さないといけない。4日後に満月になるから、それまで待って欲しい」
「おっけ。その間に何をすればいい?」
エリコは歓喜混じりに言った。
[[次へ->14]]
※ここで『月光の術』が使えるキャラクターがいれば、発動することができます
[[月光の術、発動!->88]]エリコはまず誰の元に向かうのが正しいのかを真剣に考えようとする。
しかし、なかなか決められずにいた。第一、どのヒーローも低速のガンシップで1日かかる距離にいる。せめてひとっ飛びできるくらい早い乗り物があれば……。
「ひとっ飛び……。そうだ!」
閃いたエリコは、孫悟空の病室に飛び込んだ。
「ねえ悟空さん、私に筋斗雲を貸して欲しい!」
「いきなりだな。まあ、好きにしてくれ」
こうしてエリコは筋斗雲を借りることに成功した。
少なくはあるが希望を得ることに成功したエリコは、ヒーローを早速呼びに行こうと決意するのだった。
※『筋斗雲』を手に入れました。新しい移動手段としてガンシップの代わりに使用できます。
ヒーローのパタグラフの『???』と書かれた移動日数で移動できます。
※この日はノーカウントです。ヒーローを呼びに行きましょう!
[[ヒーローの元へ向かおう! 今すぐに!->55]]「やめて!」
エリコは目の前の武将に向かって猛タックルをかけようとした。
「お前に何ができる! さらばだ!」
次の瞬間、その武将は消え去っていった。間一髪のところで間に合わなかった。
エリコは呆然としたまま、その場に立ち尽くすしかなかった。
それ以降、局長の行方は一向に分からなかった。そして、世界は滅亡する。
『END 一体あなたは誰?』
[[最初へ->1]]地下の警備室に着いた。流石にここまでは火が回っておらず、この部屋の損傷はなかった。
「早速、ビデオにアクセスするわね。あ、ビデオってのはこの施設のいたるところの映像を録画したものよ」
「流石にここまで技術が進んでいるとはな。なんども言うが、50年前とは段違いだぜ」
悟空はしばらく感心していたが、すぐさま顔色を変え、身構えた。
「誰だ!」
突然の気配。エリコもすぐさまそれを感じ、2人は身構える。
そこに現れたのは、四人の……忍者であった。忍び装束の縁に色が着いており、それぞれ赤、青、ピンク、黄色であった。全員顔を黒いマスクで隠している。
「……アクセスコード確認。相手は当局員の躑躅森エリコに間違いであろう」
赤の忍者がそう言うと、忍者たちはすぐさま構えを解いた。エリコも構えを解いて、尋ねた。
「あなたたちはもしかして、噂のJPSS専属の隠密忍者?」
エリコは聞いたことがあった。JPSSにはお抱えの精鋭隠密部隊があり、裏で暗躍していると。
最初に赤い忍者が自己紹介した。
「いかにも。我々はJPSSの忍者衆。局長・倭の直属の部隊である。誰か不法侵入者と思った。すまない。拙者は隊長を務める、ナツと申す」
「私はハルよん」
「妾はアキだ。よろしく」
ピンク、黄色の忍者が続く。彼女2人はくノ一のようだった。
「……」
ただ一人、青色の忍者は言葉を発しなかった。ナツが代わりに、
「彼はフユだ。このような奴だ。気にするな」
ナツはそして、悟空の方を見やった。
「そなたが孫悟空か。局長の切り札であると言う話だけは聞いていた」
「俺も忍者の存在は聞いてはいたが、まさか本当にいるとは思わなかった」
ここでエリコは、早速一番の質問をした。
「みなさん、局長がさらわれたの。何か知らない?」
しかし、忍者衆全員は、難しい顔をした。
「すまぬな。エリコ殿が犯人と対峙していたところのビデオを見てみたが、検討もつかなかった」
それを聞いた孫悟空が忍者たちに提案をする。
「早速そのビデオを見せてくれないか?」
[[次へ->48]]
† Column †
JPSS忍者衆
局長直属の隠密部隊。そのためか存在を認知する者は少ない。消えた局長を探しにきていた。
・忍者ハル
手裏剣、忍具の使い手であるくノ一。お調子者で桃色がトレードマーク。
・忍者ナツ
忍者衆のリーダー及び忍術の使い手。熱血漢で、赤がトレードマーク。
・忍者アキ
吹き矢の狙撃を得意とするくノ一。冷静な性格で橙がトレードマーク。
・忍者フユ
鎖鎌を自在に操る。無口でほとんど話さない。青がトレードマーク。ビデオはまさに、エリコと謎の武将が対峙しているシーンであった。
しかしカメラのアングル的に、武将の後ろ姿が映る感じになってしまっていた。エリコが見た顔が見えないのが残念だった。
しかし意外なことに、悟空はそれを見て驚愕していた。
「これは……」
「何かわかるの?」
「天界の神将だ」
天界。まさかその悟空の因縁の地の神将であるとは今まで誰も思わなかっただろう。悟空は鎧の感じから、早くもそれを見破った。
悟空は早速警備室から出ようとした。
「どこに行くの? 悟空さん」
「天界にカチコミに行く。お前たちはここで待っていろ。天界のことは俺がなんとかする」
エリコは今にも出て行こうとする悟空に向け、声をかけた。
[[分かった、悟空さんを信じる->44]]
[[……私も行くわ->63]]
[[ひとまず様子を見ましょう->10]]
† Column †
天界
玉帝(天帝)がおわす、雲の上の世界。かつて1700年前、悟空が最初にやってきたときは「弼馬温」という最底辺の役職として働いていた。底辺だったことに怒った悟空は「斉天大聖」を名乗って数多の神将と対決する。それに勝った孫悟空は「斉天大聖」の役職を追認させ、天界の蟠桃園と呼ばれる桃園の管理を任される重要なポジションについた。しかし、調子に乗った孫悟空は蟠桃園の桃を全部平らげるなど暴挙に走り、ついには逃走。怒った天帝は神将たちを潜伏先の花果山に派遣。悟空は善戦するもついに敗北し、天界の八掛炉で49日間火あぶりにされる。炉の蓋が開いた時を見計らい脱出した孫悟空は、今までの鬱憤をを晴らすかのように天界で破壊の限りを尽くした。それは釈迦が悟空を封印するまで続いた。
悟空封印後は復興を遂げた。ちなみに天界での1日は、地上世界で1年経過するので注意。「「客人?」」
閻魔大王は奥から人を呼び寄せる。出てきたのは老人だった。
「ジジイ。久しぶりじゃないか」
「大聖、久しぶりじゃのう」
えらく悟空が親密であったので、エリコは聞いた。
「……誰?」
「太上老君だ。道教開祖のな」
この人が。確かにその威厳から、なにか神みたいなものではあろうと思っていたが。
「教えてくれよ。天界で何があった?」
悟空は早速太上老君に質問した。
「天界が乗っ取られたんじゃ。首謀者は知らん。だからこうしてわしはこの幽冥界に逃げ込んできたんじゃ」
「なるほど。早速明日、天界がどうなってるのかを見にいってみる」
悟空はそう言うと、幽冥界を後にした。
「大聖よ。そなたの力を信じてはおるが、くれぐれも気をつけるんじゃぞ」
太上老君はその背中に声をかけた。そして、
「そこの乙女」
悟空に続くエリコを呼び止めた。
「はい?」
「あの猿と行動を共にするのは危険が伴うぞ。それを重々承知じゃろうな?」
太上老君の質問に、エリコは、
[[はい! できてます。->59]]
[[……正直、不安です。->27]]
† Column †
太上老君
道教の始祖。元々地上での「老子」が死んで神になった姿。斉天大聖に不老不死の金丹を食べられたり、八掛炉を壊されたりとかつて一番被害を被っていた人物ではあるが、天竺への旅には進んで悟空に協力した。ちなみに彼の元から逃げ出した炉番の兄弟が金角大王・銀角大王となって悟空の前に立ちはだかったが、悟空が退治したおかげで彼らを天界へ連れ戻すことができた。先導する悟空に従って、エリコのガンシップは上空を飛んでいく。エリコの持つ操縦桿は、緊張で汗まみれになっていた。
どれほど飛んだだろうか? 悟空はとある雲の中に突っ込んでいった。
ガンシップがそれに続く。しばらく何も見えなかったが、雲を抜けると……
「門……?」
驚くなかれ、雲の上に立派な唐風の門がそびえていた。門は太陽の光を浴びて煌々と輝いていた。門上の看板には「西天門」の文字が。
ガンシップを近くに停め、エリコは地面(雲)に一歩を踏み入れた。雲は意外と固く、歩くのに支障はなかった。
孫悟空が筋斗雲からおり、エリコと同じく西天門を見上げる。
「まさか雲の上にこんなものがあるなんて」
「普段は門番である広目天がいるはずなんだがな。久し振りの天界だってのにここまで歓迎がないなんてな」
と、ここで門の奥から騒がしい叫び声がかすかに聞こえてきた。
「どうやら始まっているようね」
おそらく忍者衆たちが、攻撃を開始しているのだろう。
「注意がそれている今のうちに急ぐぞ」
二人は門の中に入っていった。
そこからまもなく、目的の白虎宮はあった。その中華風の屋敷に、二人は入っていく。
そして、中の大広間に、局長は閉じ込められていた。
「局長! 救出に参りました!」
「きてくれると思ったよ。感謝する、エージェントエリコ。斉天大聖、久し振りだな」
「倭、お前も歳をとったもんだ。だが無事で何よりだな」
倭の後ろには、同じく捕まっていた神将達がいた。
「せ、斉天大聖様……」
「怯えてんじゃねえよ。今回はこの倭を救出しに来ただけだ。ついでにお前らもな」
「なんとお礼を申し上げたらいいか」
「礼はいい。これでかつて天界を荒らした一件は完全に無しだ。それともう一つ、今回こんなことをしでかした親玉ってのは一体誰だ? 俺が知ってるやつか?」
「それは……」
神将達が答えあぐねている。それほど口に出すのが憚られるほど怖い敵なのか。
しかし、悟空が問いただす必要はすぐさま無くなった。
「斉天大聖。久し振りだな。待ちくたびれたぞ」
そこに、まさにあの神将が現れたからである。
「っ……! まさかお前だとはな。二郎神君」
悟空はその顔を見て、武者震いを起こした。
[[次へ->11]]「ここが、天界……?」
あっという間に天界の南天門に着いた時、エリコは放心状態だった。
「その通りだ。エリコ、早速始めるぞ」
「あ、ああ、分かったわ」
我に返ったエリコを確認した孫悟空は、耳から小さい何かを取り出す。それは如意棒で、たちまち手頃な大きさとなった。
南天門には何人かの門番の神将が警備していたが、悟空の堂々たる姿を見た時、恐れおののいた。かつて天界を大きく荒らし回ったとあって、今でも孫悟空は噂通り天界で恐れられているらしい。
「久しぶりだな、天界よ。再び暴れにきたぜ」
「せ、斉天大聖だ〜!」
逃げ惑う神将たちに対し、悟空は如意棒を容赦無く振り上げる。一気に数人が、いとも簡単に薙ぎ払われた。
エリコも負けじと、拳銃を取り出し攻撃を始めた。
「よし、中に入るぞ! ついてこい! エリコ」
「ラジャ!」
二人は門を抜ける。そこには応援に駆けつけた、数多くの神将が待ち構えていた。
ドガン! ガシャン!
悟空は建物、神将を払いのけながら、中央にある天界の中枢、霊霄宮(れいしょうきゅう)に歩みを進めていた。すでに二人の後には、瓦礫の山が積み重なっている。孫悟空がかつて最初に配属され「弼馬温」と揶揄される元になった馬小屋、太上老君の住まいの兜率天宮も、もはや木っ端微塵になっていた。蟠桃園の桃の木も、全てなぎ倒されてしまった。
「久しぶりに暴れるってのは、気分爽快なもんだな」
「これ、あとが怖いやつじゃ……」
そしてついに、霊霄宮の眼前まで来るに至った。立ち向かってくる神将は、もはやいなくなっていた。
「さあ、出てこい! 地上の人間をさらうという禁忌を犯しやがったのは、どこのどいつだ!?」
悟空は渾身の叫びを響き渡らせた。
するとそこに、聞き覚えのある声が背後からした。
「この私だ。久しぶりだな。斉天大聖」
突如として現れた白銀の神将の顔を見て、悟空は驚愕の表情を浮かべる。
「お前は、二郎神君……!」
エリコは悟空の顔に、冷や汗が流れたのを見た。
[[次へ->45]]「トウユウ 現代英雄演義」
竹田 啓 作
注意
・この話は斎藤洋著「西遊記」の内容を参考に、物語を展開しております。
・パタグラフは100です。
・選択肢が特殊な条件を満たすことで選択できるものがあります。ご注意を!
[[GAME START!!->1]]